長期譲渡所得の課税の特例とは?

長期譲渡所得の課税の特例とは?

国税庁で住宅ローン控除の適用条件を確認すると「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」という項目が含まれています。

住宅ローン控除の適用を希望する方の中には、この条件に引っ掛かり、住宅ローン控除が受けられない方が少なからずいらっしゃるようです。

そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、この条件の意味をわかりやすくご説明しましょう。

1.「長期譲渡所得の課税の特例など」に含まれる特例は全部で4つ

国税庁タンクスアンサーNo.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」と「国税庁タンクスアンサーNo.1214 中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」の「2」には、住宅ローン控除が適用される条件が記載されています。

そして、その条件の中に冒頭でご紹介した「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」という項目が含まれていますが、「長期譲渡所得の課税の特例など」に含まれる特例は以下の4つです。

1-1. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

一つ目は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。

土地や建物などの不動産は、購入時より高く売るなどして利益が出ると、出た利益に対して所得税と住民税が課せられます。

これに対する特例が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」であり、同特例が適用されれば、出た利益から3,000万円が控除されます。

つまり、同特例の適用を受けることができれば、不動産を売却しつつ利益が出たとしても、その利益が3,000万円以下であれば税金は掛からないというわけです。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例とは?

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用される主な条件は以下のとおりです。

  • 別荘などではなく、自己の居住用の家屋、または家屋が建つ敷地を売却した
  • 仮住まいなどではなく、自己が居住する不動産を売却した
  • 親子や夫婦、親族など、特別な間柄ではない相手に不動産を売却した
  • 自己の居住用の家屋、または家屋が建つ敷地を売却した年や前年、前々年に他の不動産の売却に関する税制上の特例の適用を受けていない

以上が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」が適用される主な条件で、同特例の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.3302 マイホームを売ったときの特例」にてご確認いただけます。

1-2. 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

二つ目は「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)」です。

この記事の「1-1. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」でご紹介しましたが、土地や建物、マンションなどの不動産を売却しつつ利益が出ると、その利益に対して所得税と住民税が課せられます。

そして、その所得税と住民税の額は、以下の式を用いて算出されます。

不動産の売却益に課せられる税金の算出式
売却益(不動産を売却することにより得た利益)× 税率(%)= 所得税、または住民税

以上が不動産の売却益に課せられる税金の算出式となっています。

気になるのが式の中にある税率ですが、売却した不動産の所有期間により異なり、以下のとおりです。

不動産の売却益に課せられる税金の税率

不動産の所有期間 所得税 住民税
5年以下 30% 9%
5年超 15% 5%

以上が税率で、所有期間が5年を超える不動産を売却すると税率が低くなり、その結果、所得税と住民税も安くなります。

しかし、これだけではありません。

所有期間が10年を超える自己の居住用の建物、または建物と共にその建物が所在する敷地を売却した際に受けられる特例が存在し、その特例の適用を受ければ、さらに税率が低くなります。

その特例が「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)」です。

同特例の適用を受けることができれば、6,000万円以下の売却益に課せられる税率が以下のように下がり、その結果、より所得税と住民税が安くなります。

居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合の税率

売却益の額 所得税の税率 住民税の税率
6,000万円までの売却益に対する税率 10% 4%
6,000万円を超える売却益に対する税率 15% 5%

この特例の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」にてご確認いただけます。

1-3. 特定の居住用財産の買換え・交換の特例

三つ目は「特定の居住用財産の買換え・交換の特例」です。

同特例は、自己の居住用の住宅などを売却し、新たに居住用の住宅を購入した方に向けた特例です。

たとえば、3,000万円でマイホームを購入したAさんが存在したとします。

Aさんは購入したマイホームが気に入らず、売却しつつ新しいマイホームを購入する「買い換え」を決意しました。

Aさんがマイホームを売りに出すと4,000万円で買い手が付き、Aさんには1,000万円の利益が出ました。

そこでAさんは、利益である1,000万円に持ち出しで2,000万円を上乗せし、新たに3,000万円の新居を購入しました。

安心していたAさんですが、以前のマイホームを売却したことにより得た利益である1,000万円には、所得税と住民税が課税されます。

しかし、3,000万円の新居を購入したAさんには、手元にお金がありません。

そこで適用を希望できるのが「特定の居住用財産の買換え・交換の特例」です。

「特定の居住用財産の買換え・交換の特例」の適用を受けることができれば、最初のマイホームを売却して得た利益である1,000万円に課せられる所得税と住民税の支払いを繰り延べることが可能です。

特定の居住用財産の買換え・交換の特例とは?

なお、同特例は、筆者がこの記事を書く令和元年11月現在、令和元年12月31日までにマイホームを売却した際に限り適用されるため注意してください。

同特例の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」にてご確認いただけます。

1-4. 既成市街地等内にある土地等の買換え・交換の特例

4つ目は「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え・交換の特例」です。

この特例は、不動産会社が中高層階建てのマンションなどを建築するために、所有する土地や建物を売却した方が適用を受けることができます。

たとえば、都市部に土地を所有するAさんが、購入時より高く土地を売却しつつ利益を得たとしましょう。

本来であれば、この利益に対して所得税などが課せられます。

しかし、大手不動産業者がマンションを建築するためにAさんから不動産を買い取り、その場所に新築されたマンションの一部がAさんの所有物になる「不動産の交換」が行われた場合などは、同特例の適用を受けることが可能になり、適用されれば税金が安くなったり、支払いが繰り延べされます。

ただし、同特例の適用を受けるためには、以下の条件などを満たさなければなりません。

  • 売却する土地や建物が、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県内の主要都市に位置する
  • 売却した不動産の跡地に新築された建築物の一部を同年中、または翌年中などに取得する

同特例の詳細は「電子政府の総合窓口e-Gov 租税特別措置法」の第三十七条の五(既成市街地等内にある土地等の買換え・交換の特例)や「首相官邸 中心市街地の活性化に関する促進税制特例」にてご確認いただけます。

2. 居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間とは?

冒頭でご紹介したとおり、国税庁のサイトには住宅ローン控除の適用条件が記載され、その条件の一つが「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」です。

そして、この条件にある「長期譲渡所得の課税の特例など」とは、先にご紹介した4つの特例ですが、「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間」の意味は以下のとおりとなっています。

居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間とは?

つまり、住宅ローンを利用しつつ住宅を購入し、その住宅に入居した年を含めた前後2年間(合計5年間)に、これまでにご紹介した4つの特例を受けていないことが条件という意味です。

まとめ - これらの条件は、住宅ローンで買換える時に引っ掛かる

住宅ローン控除の適用条件のひとつである「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」の意味をわかりやすくご説明しました。

まとめると、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」とは、以下の4つの特例を表します。

  • マイホームを売却して得た利益に課せられる所得税や住民税が控除される「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」
  • 10年を超えて所有するマイホームを売却して得た利益に課せられる所得税や住民税の税率が低くなる「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」
  • マイホームを買い替えた際に発生した利益に課せられる所得税や住民税の支払いを繰り延べできる「特定の居住用財産の買換え・交換の特例」
  • 所有する土地や建物をマンションの一部と交換した際に発生した利益に課せられる税金の支払いを繰り延べできる「既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え・交換の特例」

以上が4つの特例です。

また「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間」は、住宅ローンを利用しつつ住宅を購入した年を含む、その年の前後2年間(合計5年間)という意味となっています。

はじめてマイホームを購入する方が、これらの条件に引っ掛かることは稀ですが、以前所有していた不動産や相続した不動産を売却し、特例を受けつつ税額を抑え、新たに住居を購入する場合は引っ掛かる可能性があるため注意してください。