不動産の売却に関する税金を解説(かかる,かからないの分岐点)

売るとスッキリするのが不動産ですが、心配なのが税金です。
しかし、一戸建てやマンションなどのマイホーム、または、マイホームが建っていた土地などを売却した場合は、よほど高く売れない限り税金は掛かりません。
不動産の売却を希望する方や、既に売却した方へ向けて、税金がかからないケースとかかるケースをご紹介し、それに伴う申告の必要性などもご紹介しましょう。
なお、この記事でご紹介する内容は、個人の方が不動産を売却した場合に税金がかかる否かをご紹介するもので、事業用の不動産を売却した方には該当しないためご注意ください。
目次
1. 不動産を売って税金がかからないケース
はじめに、一戸建てやマンション、土地などの不動産の売却を希望する方や、既に売却した方へ向けて、税金が掛からないケースをご紹介しましょう。
1-1. 購入価格より売却価格が低い場合
購入した価格より不動産を安く売却した場合は、極一例を除いて税金は掛かりません。
また、売却額からは、その不動産を購入する際や売却する際に支払った仲介手数料などの諸費用を差し引くことができます。

2-2. 居住用不動産譲渡の3000万円控除が適用される場合
不動産が購入価格より高く売れたとしても、差額が3,000万円以下の場合は「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用されます。
「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」とは、不動産を売却することにより得た利益から3,000万円が控除される制度です。
同控除が適用されれば、不動産を売却して3,000万円の利益が出たとしても税金は掛かりません。

ただし、同控除が適用されるには、以下の条件などを満たす必要があるため注意してください。
なお、「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」の詳細は「国税庁タックスアンサー No.3302 マイホームを売ったときの特例」にてご確認いただけます。
- 居住用の建物や、その建物が建つ土地を売却した場合
- 現在居住する建物や、その建物が所在する土地を売却した場合は、居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されます。
また、過去に居住した建物や、その建物が所在する土地を売却した場合は、引っ越した日から3年後の年の12月31日までに売却が完了すれば、居住用不動産譲渡の3,000万円控除を受けることが可能です。
そして、過去に居住した建物を取り壊しつつ更地にした土地を売却した場合は、取り壊した日から1年以内に売買契約が締結され、かつ、引っ越した日から3年後の年の12月31日までに売り主に引き渡せば、居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されます。
なお、別荘や、別荘が建つ土地を購入価格より高く売却した場合は、居住用不動産譲渡の3,000万円控除は適用されません。
さらに、仮住まいを売却した場合や、居住用不動産譲渡の3,000万円控除を目的として購入しつつ売却された不動産も同控除を受けることはできません。 - 前年、前々年に居住用不動産譲渡の3,000万円控除を受けていない場合
- 不動産を売却した前年、または一昨年に他の不動産を売却し、居住用不動産譲渡の3,000万円控除を受けている場合は、同控除は適用されません。
- 親子間や夫婦間で売買を行っていない場合
- 親子や夫婦で不動産を売却した場合は、居住用不動産譲渡の3,000万円控除は適用されません。
また、自分が経営する会社などに不動産を売却した場合も、同控除を受けることができないため注意してください。
3. 不動産を売って税金がかかるケース
つぎに、不動産を売却して税金が掛かるケースをご紹介しましょう。
不動産を売却して税金が掛かる主なケースは、購入価格より高く売却し、さらに、先にご紹介した「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用されない場合となります。
不動産を購入時より高く売り、なおかつ居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用される条件を満たさない場合は税金がかかるため注意してください。
4. 不動産の売却益に課せられる税金の種類とその税率
不動産を購入価格より高く売却しつつ利益を上げ、さらに居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されない場合は、その利益に対して所得税と住民税が課せられます。
所得税と住民税の額を計算する式は以下のとおりです。
不動産売却益に課せられる所得税を計算する式
売却により得た利益 × 税率 = 不動産売却益に課せられる所得税
不動産売却益に課せられる住民税を計算する式
売却により得た利益 × 税率 = 不動産売却益に課せられる住民税
そして、それぞれの税率は、売却した不動産を所有していた期間により異なり、以下のとおりとなっています。
不動産売却益に課せられる所得税と住民税の税率
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 9% |
5年超(長期譲渡所得) | 15% | 5% |
ただし、所有期間が10年を超える不動産を売却した場合は、売却することにより得た利益の額により税率が変わり、以下のようになります。
所有期間が10年を超える不動産の売却益に対する税率
利益 | 所得税率 | 住民税率 |
---|---|---|
6,000万円までの部分 | 10% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15% | 5% |
5. 売却した不動産の購入価格が分からない場合
不動産を購入価格より高く売却しつつ利益を上げ、さらに「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用されない場合は、その利益に対して所得税や住民税が課せられます。
しかし、相続した不動産を売却した場合などは購入価格が分からず、利益が出たか判断できません。
これに該当する場合は、その不動産の購入価格を売却価格の5%に見積もることができます。
たとえば、購入価格が不明な不動産を1,000万円で売却した場合は、購入価格は5%の50万円という具合です。
この制度を利用すると、必ず購入価格より売却価格の方が高くなり、利益が出たと見なされますが、居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されれば税金はかかりません。
なお、この制度の詳細は「国税庁タックスアンサーNo.3258 取得費が分からないとき」にてご確認いただけます。

6. 税金がかからない場合と、かかる場合の申告の必要性
不動産を購入価格より安く売却すれば税金はかかりません。
また、不動産を購入価格より高く売却したとしても「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用されれば、同じく税金はかかりません。
そして、不動産を購入価格より高く売却し、なおかつ「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用される条件を満たさない場合は税金がかかります。
そこで気になるのが、それぞれの状況における申告の必要性ですが、以下のとおりです。
- 購入価格より売却価格が低い場合
-
購入価格より売却価格が低い場合は税金がかからず、原則として申告も不要です。
ただし、確定申告の時期に税務署から、不動産を売却したものの利益が出なかったことを確認する往復はがき「譲渡所得がある場合の確定申告のお知らせ」などが届くことがあります。
「譲渡所得がある場合の確定申告のお知らせ」などが届いた場合は、利益が出なかったことを返信はがきに書き添え、送り返すことにより手続きが完了します。 - 居住用不動産譲渡の3,000万円控除を受ける場合
- 購入価格より不動産が高く売れ、居住用不動産譲渡の3,000万円控除を適用させる場合は、不動産を売却した翌年に確定申告を行い、その旨を税務署に知らせる必要があります。
そして、確定申告の際は、不動産の購入価格や売却価格が記載された売買契約書などの提出を求められるため注意してください。 - 居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されない場合
- 購入価格より不動産が高く売れ、さらに居住用不動産譲渡の3,000万円控除が適用されない場合は、不動産を売却した翌年の確定申告が必要です。
そして、売却益に対して所得税や住民税が課せられ、それらは分離課税(給与所得などと合算されない課税方式)となります。
詳細は、お住まいの地域を管轄する税務署にお問い合わせください。
まとめ - 買換えにおける3,000万円控除には注意すべき点がある
不動産の売却を希望する方や、既に売却した方へ向けて、税金がかかる状況とかからない状況をご紹介しました。
ご自分が住んでいた住宅や、その住宅が建つ土地を売却した場合は、3,000万円を超える利益が出ない限り、大抵は「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」が適用され税金はかかりません。
よって、余程の邸宅や別荘などを売却しない限り、税金に関する心配は不要です。
ただし、「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」の適用を受けると、その年から2年以内などは住宅ローン控除が受けられないため注意してください。
住宅ローン控除の適用条件のひとつに「居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと」という項目が含まれ、その長期譲渡所得の課税の特例が「居住用不動産譲渡の3,000万円控除」です。
マイホームを売却し、住宅ローンを利用しつつ新たな住宅を購入し、住宅ローン控除を受けたいと希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひご注意ください。
住宅ローン控除の適用条件のひとつである長期譲渡所得の課税の特例の詳細は、当サイトのコンテンツである「長期譲渡所得の課税の特例とは?(住宅ローン控除の落とし穴)」にてわかりやすくご説明中です。
マイホームの買い替え予定がある方は、ぜひご覧ください。失礼いたします。