不動産投資は法人と個人でどう違う? 違いをわかりやすく解説

不動産投資は、法人として行う方法と、個人事業として行う方法があります。
とある投資家は「法人の方が得」と断言し、とある投資家は「個人事業で十分」と言い切り、はじめて不動産投資を行う方は、どちらが良いか判断できません。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、これから不動産投資をはじめる方へ向けて、不動産投資を法人で行う場合と、個人事業で行う場合の違いを3つご紹介しましょう。
その1. 課税所得にかかる税金や税率が違う
不動産投資を法人で行う場合と、個人事業で行う場合の最も大きな違いは、課税所得金額(賃料収入から必要経費を差し引いた、税額を算出する元となる金額)に課せられる税金の種類と、その税率の違いです。
法人と個人事業で不動産投資を行う場合における、それぞれの課税所得金額に課せられる税金と税率は、以下のとおりとなっています。
法人として行う不動産投資に課せられる税金と税率
税金の種類 | 主な税率や税額 |
---|---|
法人税 | 課税所得金額の約23%程度で、原則として一律 |
法人事業税 | 都道府県により異なるが、課税所得金額の約7%程度 |
法人住民税 | 都道府県により異なるが、概ね7万円程度 |
個人事業として行う不動産投資に課せられる税金と税率
税金の種類 | 主な税率や税額 |
---|---|
所得税 | 課税所得金額が小さい場合は5%と低く、大きい場合は45%と高くなる累進課税方式 |
住民税 | 都道府県により異なるが、概ね10% |
事業税 | 「(不動産所得+青色申告特別控除額-事業主控除)×5%」で計算する。ただし、不動産投資の規模が小さい場合は課税されない |
以上が法人と個人事業で不動産投資を行う場合に課せられる税金の種類と、その税率となっています。
ご紹介したように、法人に課せられる法人税の税率は一律であり、課税所得金額の約23%程度です。
また、個人事業に課せられる所得税の税率は累進課税方式であり、課税所得金額の5%から45%となっています。
よって、規模の小さな不動産投資を行う場合は、個人事業の方が税金が安くなり、規模が大きな不動産投資を行う場合は、法人の方が税金が安くなるのが特徴です。
なお、具体的に税金が安くなる目安は、投資家により意見が別れますが、課税所得金額が900万円を超える場合は法人の方が税金が安くなり、900万円以下の場合は個人事業の方が税金が安くなると例えられます。
その2. 経費に計上できる範囲が違う
不動産投資を行うと、法人や個人事業を問わず、修繕費用などを必要経費として計上しつつ、不動産所得や課税所得金額を小さくし、税金を安くできます。
しかし、計上できる経費は、法人の方が多いのが特徴です。
例えば、法人であれば、自らへの役員報酬を経費として計上しつつ法人税を安くできますが、個人事業では計上できません。
また、複数の事業を展開する場合、法人であれば、一方の事業が赤字で、一方の事業が黒字の場合、それらを損益通算しつつ課税所得金額を小さくし、税金を安くできますが、個人事業の場合はできません。
ただし、法人で不動産投資を行うと、決算の手続きが複雑になるため、税理士を雇う必要があるなど、経費と面倒が絶えないという側面もあります。
その3. 不動産売却益に対する税率が違う
不動産投資は、毎月の賃料収入による利益と、不動産自体を売却することにより得る利益が見込めます。
そのため、投資用の不動産を購入しつつ運用するものの、思うように賃料収入が上がらない場合は、売却して利益を上げるのが通例です。
もちろん、売却益には税金が課せられますが、法人と個人事業では、以下のように税金の種類や税額が異なります。
- 法人の場合
- 法人が不動産を売却することにより得た利益は、通常の利益として計上することが可能で、他の利益と合算しつつ課税所得金額を算出し、課税所得金額対して法人税と法人事業税が課せられます。
法人税の税率は23%程度、法人事業税の税率は7%程度で、合計30%程度です。 - 個人事業の場合
- 個人事業で不動産を売却することにより得た利益は、他の利益と分離しつつ、その売却益のみに対して所得税と住民税が課せられます。
その際の所得税と住民税の税率は、取得から5年以下に売却した場合は「短期譲渡所得」と見なされ、それぞれ30%と9%(合計39%)です。
また、取得から5年以降に売却した場合は「長期譲渡所得」と見なされ、それぞれ15%と5%(合計20%)の所得税と住民税が課せられます。
このように、不動産の売却益に課せられる税金は、法人と個人で大きく異なり、法人で得る売却益には30%の税金が、個人事業の短期譲渡所得には39%の税金が、長期譲渡所得には20%の税金が課せられます。
よって、頻繁に不動産を売却しつつ利益を上げるような不動産投資を行う場合は、法人の方が税金が安く、ときおり不動産を売却しつつ利益をあげるような不動産投資を行う場合は、個人事業の方が税金が安くなるのが特徴です。
ただし、個人事業で上げた売却益は、他の利益と分離しつつ課税されるため、賃料収入がある場合は、その利益に対しても所得税や住民税が課せられるため、注意してください。
まとめ. 法人と個人事業の違いは、ズバリ税金の差!
これから不動産投資をはじめる方へ向けて、不動産投資を法人で行う場合と、個人事業で行う場合の違いを3つご紹介しました。
法人と個人事業で不動産投資を行う場合の違いをまとめると、税金や税率など、主に税に関することです。
具体的には、本業として大規模な不動産投資を行う場合は、法人の方が税金が安く、副業として小規模な不動産投資を行う場合は、個人事業の方が税金が安くなります。
そのため、不動産投資は、ご自分に合ったスタイルで開始するのがお薦めです。
ご紹介した内容が、皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。