契約不適合責任とは?わかりやすく解説

契約不適合責任とは?わかりやすく解説

契約不適合責任とは、契約を結びつつ引き渡された目的物に、欠陥があった場合に売主が負う責任です。

契約を結びつつ何かしらを売買する予定のある方は、契約不適合責任を理解しておけば、様々なリスクを最小限に抑えられます。

契約不適合責任をわかりやすく解説し、契約不適合責任免責や瑕疵担保責任、瑕疵担保責任免責、契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いなどもご説明しましょう。

目次

1. まずは民法を知る

契約不適合責任を解説する前に、民法をわかりやすく簡単にご紹介します。

契約不適合責任を理解する前に、まずは民法を知ってください。

民法とは、財産や家族、売買や契約など、市民生活に関する規律を定めた法律です。

民法とは、財産や家族、売買や契約など、市民生活に関する規律を定めた法律

法律と聞くと難しいという印象を受けますが、民法は私たちにとって最も身近な法律であり、知れば「なるほど、おもしろい」と感じる条文がたくさんあります。

たとえば、日本では18歳から成人、すなわち大人とみなされますが、それは民法にて定められ、その条文をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

民法 第四条(成年)
18歳をもって、成人とする

また、日本では18歳にならなければ結婚できませんが、それも民法にて定められ、その条文を簡単にご紹介すると以下のようになります。

民法 第七百三十一条(婚姻適齢)
結婚は、18歳にならなければできない

さらに、日本では結婚している方は他の方と結婚できませんが、それも民法にて定められ、その条文をご紹介すると以下のとおりです。

民法 第七百三十二条(重婚の禁止)
夫、または妻が存在する者は、他の者と結婚できない

このように民法とは、市民生活に関する規律を定めた法律であり、私たちにとって最も身近な法律となっています。

ちなみに、当サイトは不動産売買をわかりやすく解説するサイトですが、民法では「不動産」という言葉の意味も規定しています。

その部分を簡単にご紹介すると、以下のとおりです。

民法 第八十六条(不動産及び動産)
土地や土地に定着しているものは、不動産とする。また、不動産以外のものは、すべて動産とする

つまり、不動産とは、土地と土地に定着しているもの、すなわち土地と建物などであるというわけです。

つづいて、契約不適合責任をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。

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2. 契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、民法によって規定された、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任のことです。

目的物とは、土地や建物などの不動産、中古車などの商品、何かしらの業務などを指します。

契約不適合責任とは、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任

そもそも、契約を結びつつ引き渡された目的物の買主は、民法の規定により「追完請求権(ついかんせいきゅうけん)」という権利を有します。

買主が有する追完請求権とは、契約を結びつつ引き渡しを受けた目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥や不備がある場合に請求できる権利です。

具体的には、買主は売主に以下の4つのことを請求できます。

追完請求(きちんとした状態にしてください)
契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥や不具合があれば、買主は売主に、修補や代わりの物の引き渡しを請求できます。
代金減額請求(支払った代金の一部を返金してください)
契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容を満たさない欠陥や不備があれば、買主は売主に、代金の減額を請求できます。
損害賠償請求(弁償してください)
契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥や不具合があれば、買主は売主に損害賠償を請求できます。
解除請求(契約をキャンセルしてください)
契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容を満たさない欠陥や不備があれば、買主は売主に、契約の解除を請求できます。

契約を結びつつ引き渡された目的物に欠陥や不具合があれば、買主は追完請求権を行使し、上記のいずれかを売主に請求できます。

そして、買主が追完請求権を行使した場合に、売主が果たすべき責任が契約不適合責任です。

たとえば、売買契約を結びつつ売主から買主に引き渡された、木造の一戸建て中古住宅があったとしましょう。

その中古住宅に買主が住み始めたところ、土台にシロアリによる食害が発見されました。

なおかつ、その中古住宅の売買契約書には、シロアリによる食害があることは記されていません。

つまり、引き渡された中古住宅には、契約の内容にそぐわない欠陥があったというわけです。

この状況において、買主は追完請求権を行使し、売主にシロアリの駆除などを請求できます。

そして、請求を受けた売主は、契約不適合責任を果たしつつシロアリを駆除しなくてはなりません。

契約を結びつつ引き渡された目的物の買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負います。

契約を結びつつ売買された不動産などの買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負う

ただし、契約の際に、引き渡される目的物に欠陥があることを売主が買主に知らせていた場合は、買主は追完請求権を行使できません。

例を挙げると、中古住宅の売買契約書に「この中古住宅にはシロアリによる食害がある」と記されている場合は、買主は売主にシロアリの駆除などを請求できないといった具合です。

また、買主が追完請求権を行使できるのは、引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥があることを知ったときから一年以内に、そのことを売主に知らせた場合に限られます。

くわえて、引き渡された目的物の欠陥の原因が買主にある場合は、一部例外を除き、買主は追完請求権を行使できません。

契約不適合責任のルール

  • 買主が追完請求権を行使できるのは、契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥がある場合のみ
  • 買主が追完請求権を行使できるのは、契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥があることを知ったときから1年以内に、そのことを売主に知らせた場合のみ
  • 契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥があるものの、その原因が買主にある場合は、一部例外を除き追完請求権は行使できない

上記以外にも、買主の追完請求権と売主の契約不適合責任には様々な規定が設けられ、詳細は以下のとおりです。

2-1. 追完請求(民法 第五百六十二条)

契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥や不具合があれば、買主は売主に修補や代わりの物の引き渡しを請求できます。

ただし、さほど買主が損をすることがないのであれば、売主は修補や代わりの物を引き渡す以外の方法で、契約不適合責任を果たすことが可能です。

なお、「修補」は「しゅうほ」と読み、聞き慣れない言葉ですが「修理や補修」などの意味があります。

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2-2. 代金減額請求(民法 第五百六十三条)

契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容を満たさない欠陥や不備があれば、買主は売主に代金の減額を請求できます。

しかし、代金の減額を請求できるのは、買主が期限を定めつつ修補などを請求しつつも、その期限内に売主が契約不適合責任を果たさない場合に限られます。

ただし、以下のいずれかの条件に該当する場合などは、買主は直ちに代金の減額を請求することが可能です。

  • 売主が契約不適合責任を果たすことができない状態の場合
  • 売主が契約不適合責任を果たすことを明確に拒絶した場合
  • 買主が修補などを請求したとしても、売主が契約不適合責任を果たす見込みがない場合

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2-3. 損害賠償請求(民法 第五百六十四条)

契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥や不具合があれば、買主は売主に損害賠償を請求できます。

ただし、損害賠償を請求できるのは、以下のいずれかの条件などを満たす場合のみです。

  • 買主が修補などを請求するものの、売主が契約不適合責任を果たさない場合
  • 買主が修補などを請求するものの、売主が明確に拒絶した場合

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2-4. 解除請求(民法 第五百六十四条)

契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容に適合しない欠陥や不備があれば、買主は売主に契約の解除を請求できます。

しかし、契約の解除を請求できるのは、以下の条件を満たす場合に限られます。

  • 買主が期限を定めつつ修補などを請求するものの、期限を大きく過ぎても売主が契約不適合責任を果たさない場合

ただし、以下のいずれかの条件を満たす場合などは、買主は直ちに契約を解除できます。

  • 買主が修補などを請求するものの、売主が契約不適合責任を果たせない状況である場合
  • 買主が修補などを請求するものの、売主が契約不適合責任を果たすことを明らかに拒絶する場合
  • 買主が複数の修補などを請求するものの、売主がその一部しか応じず、目的物の引き渡しを受けることの契約をした意味が達成されない場合
  • 買主が修補などを請求するものの売主が応じず、なおかつ、契約の解除を請求したとしても売主が応じる見込みがない場合

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3. 不動産の買主からみる契約不適合責任の注意点

契約不適合責任とは、民法によって規定された、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任です。

目的物とは商品や業務ですが、契約不適合責任を問われることが多いのは不動産の売主であり、当サイトは不動産売買に関することをわかりやすく解説するサイトです。

よって、ここからは、不動産の購入を予定される方が知っておきたい、「不動産の買主からみる契約不適合責任の注意点」をご紹介しましょう。

3-1. 契約不適合責任を問える期間は、売主がコントロールできる

民法の第五百六十六条により、買主が契約不適合責任を問うためには、引き渡しを受けた不動産などの目的物に、欠陥があることを知ったときから1年以内に、売主に通知した場合に限られると規定されています。

よって、欠陥があることを知ったときから1年以内に売主に通知すれば、契約不適合責任を問えると考えがちです。

しかし、売買契約書に特定の条件を記せば、売主は契約不適合責任を負う期間を設定できます。

たとえば、中古住宅の売買契約書の特約事項に以下のような記述があれば、買主が契約不適合責任を問えるのは、物件が引き渡された日から1ヶ月以内です。

  • 売主は、物件が引き渡された日から1ヶ月間に限り、契約不適合責任を負う

契約不適合責任は民法によって規定されていますが、民法には「任意規定」と「強制規定」があり、契約不適合責任は任意規定です。

民法における任意規定と強制規定の違いは、以下のとおりとなっています。

任意規定
当事者が民法とは異なる取り決めを定めた場合は、その取り決めが優先される
強制規定
当事者は民法とは異なる取り決めを定めることができず、民法と異なる規定を定めたとしても、それは無効となる

契約不適合責任は任意規定であり、売主と買主が合意すれば、不動産が引き渡された日から1ヶ月間などに限り、売主は契約不適合責任を負うなど、民法と異なる規定を定めることができます。

従って、不動産を購入する際は、売買契約を結ぶ前に、売主に契約不適合責任を問える期間を確認しておかなければなりません。

具体的には、購入を希望する不動産を取り扱う不動産業者に問い合わせることにより、契約不適合責任を問える期間を確認できます。

売買契約を結ぶ当日に、契約不適合責任を問える期間が短いことを知り、慌てることがないように注意してください。

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3-2. 契約不適合責任を問えない不動産がある

契約不適合責任は任意規定であり、売主が民法と異なる取り決めを定め、買主がそれに合意すれば、売主が契約不適合責任を負う期間を1ヶ月間などに設定できます。

さらに、売りに出されている不動産には、そもそも売主が契約不適合責任を負わない物件があるため注意してください。

たとえば、売買契約書に以下のような特約がある不動産は、売主は契約不適合責任を負いません。

  • 物件の売主は、契約不適合責任を負わない
  • 物件の売主は、契約不適合責任を免責とする

売買契約書の特約事項に上記のような記述がある場合は、売主は契約不適合責任を負いません。

売主が契約不適合責任を負わないことを「契約不適合責任免責」などと呼び、築年数が古い中古住宅や、全く整地がされていない土地などは、契約不適合責任免責となっていることがあります。

契約不適合責任免責の不動産は、相場より安い傾向がありますが、相応の欠陥がある可能性を秘めているため、予想される欠陥を修補するための余剰金を用意しつつ購入するのが賢明です。

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3-3. 売主によって、契約不適合責任を問える期間が異なる

売りに出されている中古住宅や土地の中には、不動産業者が売主の物件があります。

例を挙げると、広告に「自社物件に付き仲介手数料不要」などと記されている中古住宅や土地は、不動産業者が売主です。

流行のリノベーションマンションなども、たいていは不動産業者が売主となっています。

そして、契約不適合責任は任意規定であり、売主と買主が合意すれば、売主が契約不適合責任を負う期間を短く設定できます。

しかし、売主が不動産業者である中古住宅や土地は、宅地建物取引業法という法律により、短くとも2年にわたり、売主は契約不適合責任を負うと規定されているため留意してください。

たとえば、売主が不動産業者である中古住宅を購入する際に、以下のような記述が売買契約書にある場合は誤りです。

  • 売主は、物件が引き渡された日から3ヶ月間に限り、契約不適合責任を負う
  • 売主は、契約不適合責任を負わない
  • 買主は修補は請求できるが、契約の解除はできない

また、注文住宅や建売、分譲マンションなど、新築として販売されている住宅があります。

新築として販売されている住宅は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」という法律により、物件が引き渡されたときから10年にわたり、売主は契約不適合責任を負うと規定されています。

契約不適合責任は任意規定であり、売主が個人である不動産は、売主が契約不適合責任を負う期間を短くしたり、契約不適合責任を負わないとすることが可能です。

しかしながら、不動産業者が売主の中古住宅や土地は、物件が引き渡された日から短くとも2年にわたり、売主は契約不適合責任を負います。

同様に新築は、物件が引き渡されたときから10年にわたり、売主は契約不適合責任を免れられません。

ポイント

  • 売主が不動産業者である中古住宅や土地は、物件が引き渡された日から短くとも2年にわたり、売主は契約不適合責任を負う
  • 新築住宅は、物件が引き渡されたときから10年にわたり、売主や工事請負業者は契約不適合責任を負う
  • 売主が個人である中古住宅や土地は、売主と買主が合意すれば、売主が契約不適合責任を負う期間、すなわち買主が追完請求できる期間を設定できる

ちなみに、民法における「その日から」とは、原則としてその翌日からを意味します。

「物件が引き渡された日から1ヶ月」であれば、物件が引き渡された日の翌日から1ヶ月です。

民法における期間の計算は、民法の第百四十条にて規定されています。

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4. 不動産の売主からみる契約不適合責任の注意点

契約不適合責任とは、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任です。

そして、当サイトは不動産売買に関することを解説するサイトですが、売買契約を結びつつ引き渡される不動産の売主も、契約不適合責任を負うこととなります。

ここからは、不動産の売却を予定する個人の方へ向けて、契約不適合責任の注意点をわかりやすくご紹介しましょう。

4-1. 契約不適合責任は免れることができる

民法の規定により、不動産などの買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負います。

そして、売主が契約の内容にそぐわない不動産を引き渡し、買主から修補などを請求されれば、売主は契約不適合責任を果たしつつ応じなければなりません。

しかし、それでは不動産の所有者が物件を安易に売りに出せなくなり、不動産市場は低迷します。

よって、民法において契約不適合責任は、任意規定となっています。

任意規定とは、当事者が合意すれば、民法に定められた規定より、その合意が優先される規定です。

これを理由に、不動産を売却する際に以下のような記述を売買契約書の特約に盛り込み、その内容に買主が合意しつつ売買が行われれば、売主は契約不適合責任を免れます。

  • 売主は、契約不適合責任を負わない
  • 売主は、契約不適合責任を免責とする

また、以下のような記述を売買契約書の特約に盛り込み、その内容に買主が合意しつつ売買が行われれば、売主が契約不適合責任を負う期間を指定することが可能です。

  • 売主は、物件が引き渡された日から3ヶ月間に限り、契約不適合責任を負う

契約不適合責任は任意規定であり、買主が合意すれば、売主は契約不適合責任を免れる、または契約不適合責任を負う期間を指定でき、安心して不動産を売却できます。

ただし、欠陥があることを知りながら、その事実を買主に伝えず売買契約がなされた状況においては、売買契約書に契約不適合責任を免れることを記載し、買主が合意しつつ売買が行われたとしても、契約不適合責任を免れることはできないため注意してください。

  • 引き渡す物件に欠陥があることを知りながら買主に告げずに売買契約がなされた場合は、売主は契約不適合責任を免れることができない(民法 第五百七十二条)

なお、契約不適合責任を免れる、または契約不適合責任を負う期間を設定しつつ不動産を売却したいと希望する場合は、仲介を依頼する不動産業者に予め伝えてください。

そうすれば、不動産業者がその条件に合意する買主を探しだし、それらの特約が盛り込まれた売買契約書を作成し、できあがった契約書を以て不動産を売却することとなります。

契約不適合責任を免れる、または契約不適合責任を負う期間を設定するために、買主から直接合意を得る必要はありません。

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4-2. 契約不適合責任を免れるようにすると売り値が下がる

売主の契約不適合責任は任意規定であり、不動産などの売主は必ずしも契約不適合責任を負う必要はありません。

売買契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」などと記載し、買主が合意しつつ売買契約が結ばれれば、売主は契約不適合責任を免れます。

しかし、契約不適合責任を負わないとして不動産を売りに出せば、相場より安く売却せざるを得ない可能性があるため注意してください。

不動産の買主は、同じ価格で売主が契約不適合責任を負う物件と負わない物件があれば、契約不適合責任を負う物件を選ぶ傾向があります。

そのため、不動産を少しでも高く売却したいと希望する場合は、状況が許せば契約不適合責任を免れるようにせず売りに出すのが理想です。

不動産は契約不適合責任を免責にすると、売り値が下がる

ただし、契約不適合責任を負う期間だけは、必ず設定してください。

民法には「債権等の消滅時効」という規定があり、買主が追完請求権を行使できることを知ったときから5年間にわたり行使しないとき、または追完請求権を行使できるときから10年間行使しないときは、その権利が消滅します。

これを理由に、契約不適合責任を負う期間を設定しなくとも、引き渡しから5年や10年が経てば契約不適合責任を免れますが、その期間は長すぎます。

従って、不動産を売却する際は、契約不適合責任を負う期間を必ず設定するのが賢明です。

具体的には、物件を引き渡した日から3ヶ月間などに限り、契約不適合責任を負うこととするのが良いでしょう。

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4-3. 大手不動産業者に仲介させ、追完請求のリスクを回避する

契約不適合責任は民法における任意規定であり、売主が希望すれば、契約不適合責任を負わないとしつつ不動産を売りに出せます。

しかし、契約不適合責任を負わないとしつつ不動産を売りに出せば、高く売却できません。

かといって、契約不適合責任を負うとして不動産を売りに出せば、買主から修補などを請求される虞があり不安です。

そのような状況において中古住宅を高く売却したいと希望する場合は、積水ハウスやミサワホーム、住友不動産販売、三井のリハウスなどに仲介を依頼してください。

それらの大手不動産業者は、売主と買主が安心して不動産を売買できるように、保証を付けて物件を仲介するサービスを実施中です。

保証付きで中古住宅を売りに出せば高く売却することが可能であり、引き渡した物件に欠陥があれば、修補に必要となる費用は不動産業者が負担します。

ただし、保証付きで中古住宅を売りに出すためには、仲介を依頼する不動産業者が行う物件検査に合格する必要があるため注意してください。

また、不動産業者によっては、昭和56年6月1日以降に建築確認申請を行いつつ新築された中古住宅のみに保証を付けるなど、詳細な条件を設けていることもあります。

なお、最近は「ホームインスペクション」を実施する業者が存在します。

ホームインスペクションとは、建築士などの専門家が、住宅の検査を行うサービスであり、一戸建てであれば6万円程度から利用することが可能です。

売却を希望する中古住宅にホームインスペクションを実施すれば、修補すべき欠陥があれば見つかります。

欠陥が見つかれば修補し、契約不適合責任を負う期間を短く設定しつつ中古住宅を売りに出せば、高く売却できるかもしれません。

ホームインスペクションを実施する業者は、Googleで「東京都 ホームインスペクション」などと入力しつつ検索をすることにより調べることができます。

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5. 契約不適合責任免責とは?

契約不適合責任免責とは、契約を結びつつ引き渡される目的物の売主が、契約不適合責任を負わないことの取り決めです。

目的物とは、ときには商品であり、ときには業務などを指します。

難解ですが、契約不適合責任免責を理解するためには、まずは「契約不適合責任」と「追完請求権」を理解しましょう。

契約不適合責任とは、民法によって規定された、契約を結びつつ引き渡される目的物の売主が負う責任です。

一方、追完請求権とは、同じく民法によって規定された、契約を結びつつ引き渡される目的物の買主が有する権利です。

買主が有する追完請求権とは、契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容にそぐわない欠陥があった場合に、売主に修補や代金の減額、損害賠償、契約の解除を請求できる権利です。

たとえば、売買契約を結びつつ土地を購入し、その土地に粉砕されたコンクリートの基礎などの建築廃棄物が埋まっていたとしましょう。

その土地の売買契約書には、建築廃棄物が埋まっているとは記されていませんでした。

つまり、その土地には、契約の内容にそぐわない欠陥があったというわけです。

この状況において、買主が追完請求権を行使すれば、売主に建築廃棄物の撤去や売買代金の減額、損害賠償、契約の解除を請求できます。

そして、追完請求権を行使しつつ修補などを請求された売主は、応じる責任があり、その責任を「契約不適合責任」と呼びます。

契約を結びつつ引き渡される目的物の買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任があることにより、買主は安心して物品を購入したり、業務を委託することが可能です。

契約を結びつつ引き渡される目的物の買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負う

しかし、契約を結びつつ引き渡される目的物の中には、築年数が古い中古住宅など、欠陥があってもやむを得ない商品があります。

そのような商品を売却する際に、売主が契約不適合責任を負っていては、安易に売りに出せません。

なぜなら、欠陥があってもやむを得ない商品を売却し、引き渡し後に修補を請求されれば、費用を負担しつつ修補する必要があるためです。

その費用は、場合によっては売却額より高くなり、売却することにより損をすることとなるかもしれません。

そこで売主が活用するのが、契約不適合責任免責です。

売主は、契約を結びつつ目的物を引き渡す際に、その契約書に以下のような文章を含めれば、契約不適合責任を負わないこととすることができます。

  • 売主は、契約不適合責任を負わない
  • 売主は、契約不適合責任を理由として修補などの追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除を買主から請求されたとしても、責任を負わない

契約書に上記のような文章を記せば、売主は契約不適合責任を負わないとすることができ、売主が契約不適合責任を負わないことを「契約不適合責任免責」と呼びます。

なお、欠陥があることを知りながら買主に告げず、目的物を引き渡した場合は、売主は契約不適合責任を免れることはできません。

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5-1. 契約不適合責任免責は、不動産業者には適用されない

契約不適合責任免責とは、売主が契約不適合責任を負わないとする取り決めです。

そして、中古住宅や土地を購入しようと資料を取り寄せると「契約不適合責任免責」と記されていることがあります。

契約不適合責任免責の注意点

資料に契約不適合責任免責と記されている不動産は、その物件の売主は契約不適合責任を負わないことを意味します。

しかし、その物件の売主が不動産業者である場合は、誤りのため注意してください。

不動産業者が個人を相手として不動産を売却する際は、契約不適合責任を免責にできず、物件を引き渡した日から短くとも2年にわたり、契約不適合責任を負うこととなります。

また、新築の売主や工事請負業者は、その新築を引き渡したときから10年にわたり契約不適合責任を負い、10年間は契約不適合責任を免れることができません。

不動産業者が契約不適合責任を短くとも2年にわたり負うことは「宅地建物取引業法」にて、新築の売主が10年にわたり契約不適合責任を負うことは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にて規定されています。

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5-2. 契約不適合責任免責には全部と一部がある

契約を結びつつ引き渡される目的物の買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負います。

買主が追完請求権を行使すれば、以下の4つのうちのいずれかを売主に請求できます。

  • 1. 追完請求(修補をしてください)
  • 2. 代金減額請求(支払った代金の一部を返してください)
  • 3. 損害賠償請求(弁償してください)
  • 4. 解除請求(契約を解除してください)

しかし、契約不適合責任免責であれば、一部例外を除き、買主は売主に契約不適合責任を問えませんが、契約不適合責任免責には全部と一部があります。

たとえば、売買契約書に以下のような記述があれば、売主の全部の契約不適合責任が免責です。

  • 売主は、契約不適合責任を負わない
  • 売主は、契約不適合責任を理由として修補などの追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除を買主から請求されたとしても、責任を負わない

一方、売買契約書に以下のような記述がある場合は、契約不適合責任の一部が免責となります。

  • 売主が買主に対して行う損害賠償は、いかなる理由があっても100万円を超えないものとする
  • 売主は、物件を引き渡した日から3ヶ月間に限り契約不適合責任を負う

契約不適合責任とは、民法によって定められた、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任ですが、任意規定となっています。

民法における任意規定とは、当事者が合意すれば、民法に定められた規定より、その合意が優先される規定です。

よって、契約不適合責任は、売主と買主が合意すれば、売買契約書に記すことによって全部を免責にしたり、一部を免責とすることができます。

ただし、不動産業者が売主である中古住宅や土地の売買契約、または新築の売買契約や工事請負契約には、契約不適合責任免責自体が適用されません。

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5-3. 契約不適合責任免責物件とは?

不動産を探しつつ広告を見ると「契約不適合責任免責」という注意書きがある物件を見かけることがあります。

契約不適合責任免責という注意書きがある物件を「契約不適合責任免責物件」などと呼び、契約不適合責任物件とは、売主が契約不適合責任を負わない物件です。

契約不適合責任免責物件を購入した場合は、物件を購入後に欠陥が見つかったとしても、売主に修補などを請求できません。

契約不適合責任免責物件とは?

不動産を購入する際は、売主と売買契約を結びますが、売買契約を結びつつ引き渡される不動産の買主は、追完請求権という権利を有します。

不動産の買主が有する追完請求権とは、購入した物件に、契約の内容をみたさない欠陥が見つかった状況において、売主に修補や代金の減額、損害賠償、契約の解除を請求できる権利です。

不動産を購入し、その物件に契約の内容をみたさない欠陥があれば、買主は追完請求権を行使しつつ、売主に修補や代金の減額、損害賠償、契約の解除を請求できます。

そして、買主が追完請求権を行使しつつ修補などを請求すれば、売主は応じる責任があり、その責任を契約不適合責任と呼びます。

たとえば、中古住宅を購入したとしましょう。

その中古住宅の売買契約書には「雨漏りがある」と記されていませんでしたが、居住すると雨漏りが見つかりました。

この状況において、一定の条件を満たしているのであれば、買主は追完請求権を行使しつつ売主に雨漏りの修補などを請求できます。

請求された売主は、契約不適合責任を果たしつつ修補しなければなりません。

しかし、不動産の中には、築年数が古く劣化した中古住宅や、相続しつつどのように使われていたかわからない土地などがあり、欠陥があってしかるべき物件があります。

そのような物件を売却する際に、売主が契約不適合責任を負っていては、安易に売りに出せません。

なぜならば、売却をすることにより買主から修補を請求され、その費用が高額になる可能性があるためです。

よって、どこかに欠陥があって当然である、または欠陥があるかもしれない不動産を売主が売りに出す際は、契約不適合責任免責物件、すなわち「売主が契約不適合責任を負わない物件」として売りに出すことがあります。

売主が所有する不動産を契約不適合責任免責物件として売りに出せば、引き渡し後に欠陥が見つかりつつ買主から修補などを請求されても、応じる必要はありません。

一方、契約不適合責任免責物件を購入した買主は、欠陥があったとしても、売主に修補などを請求できないこととなります。

なお、一般に契約不適合責任免責物件は、相場より安く売りに出されます。

その理由は、いわずもがな、欠陥があっても売主は責任を負わないためです。

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6. 瑕疵担保責任とは?

契約不適合責任と共に知っておきたい言葉に「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」があります。

契約不適合責任とは、民法によって規定された、契約を結びつつ引き渡された目的物の売主が負う責任です。

瑕疵担保責任も似ています。

瑕疵担保責任とは、民法によって規定されていた、目的物の売主が負う責任です。

契約不適合責任は「民法によって規定された」であり、瑕疵担保責任は「民法によって規定されていた」ですが、民法は2020年4月に改正されました。

瑕疵担保責任とは、改正前の民法によって規定されていた、目的物の売主が負う責任であり、現在は規定されていません。

改正前の民法で規定されていた瑕疵担保責任をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のとおりです。

旧民法 第五百七十条(売主の瑕疵担保責任)
契約を結びつつ売買した目的物に隠れた瑕疵があり、買主がそれを知らず、なおかつその瑕疵により契約をした目的が達成されない場合は、買主は契約を解除できる。

契約の解除ができない状況である場合は、買主は売主に損害賠償のみを請求できる。

ただし、契約の解除や損害賠償を請求できるのは、買主が隠れた瑕疵があることを知ったときから1年以内に限られる。

上記には「瑕疵(かし)」という言葉が含まれていますが、瑕疵とは「欠陥」や「キズ」などの意味があります。

たとえば、売買契約を結びつつ中古住宅を購入した買主の方がいらっしゃったとしましょう。

その中古住宅に買主の方が住み始めたところ、地盤が沈下しつつ家が傾いていることが判明しました。

傾きはさほど大きくなく、売買契約を結んだ時点ではわからない程度です。

しかし、確実に地盤は沈下しており、放置すると建物は倒壊するかもしれません。

つまり、その中古住宅には、隠れた瑕疵があったというわけです。

この状況において買主は、中古住宅が傾いていることを知ったときから1年以内であれば、売主に契約の解除や損害賠償を請求できます。

そして、契約の解除や損害賠償を請求された売主は、責任を果たしつつ応じなければならず、その果たすべき責任が瑕疵担保責任です。

瑕疵担保責任とは、改正前の民法によって規定されていた、目的物の売主が負う責任

以上が、改正前の民法によって規定されていた、売主の瑕疵担保責任です。

その後、令和2年に民法が改正され、「売主の瑕疵担保責任」は「売主の契約不適合責任」に置き換わりました。

具体的には、瑕疵担保責任から契約不適合責任に置き換わることにより、「隠れた瑕疵があった場合」ではなく、「契約の内容にそぐわない欠陥があった場合」に、買主は売主に損害賠償や契約の解除を請求できるように変更されました。

また、瑕疵担保責任では、買主は売主に損害賠償と契約の解除のみを請求できましたが、契約不適合責任では、欠陥の修補や代金の減額の請求もできるように見直されています。

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7. 瑕疵担保責任免責とは?

瑕疵担保責任免責とは、売主が瑕疵担保責任を負わないことを意味します。

瑕疵担保責任とは、改正される前の民法「旧民法」によって規定されていた、目的物の売主が負う責任です。

民法とは、市民生活に関する規律を定めた法律であり、明治29年に制定され、令和2年に120年ぶりに改正されました。

旧民法では、売買された目的物に隠れた瑕疵があり、なおかつ買主がそれを知らず、隠れた瑕疵があることにより売買契約を結んだ目的を達成できない場合は、買主は売主に契約の解除や損害賠償を請求できると定められていました。

瑕疵は「かし」と読み、欠陥やキズなどの意味があり、隠れた瑕疵とは「見えない欠陥やキズ」を意味します。

瑕疵担保責任とは、旧民法で定められていた、目的物の売主が負う責任

たとえば、家を建てるために、売主と売買契約を結びつつ土地を購入した買主の方がいらっしゃったとしましょう。

買主の方が家を建てるために基礎を設置しようと地面を掘り返したところ、大量のゴミが埋まっていました。

ゴミが埋まっていれば基礎を設置できず、家を建てられません。

つまり、その土地には隠れた瑕疵があり、瑕疵があることにより、買主は売主と売買契約を結んだ目的を達成できないというわけです。

この状況において買主は、売主に契約の解除や損害賠償を請求できます。

損害賠償を請求された売主は、責任を果たしつつ対応しなくてはならず、その責任が瑕疵担保責任です。

しかし、それでは、使用したことがない土地や、築年数が古くなり隠れた瑕疵があると想定される中古住宅などの売却を希望する売主は、物件を売却できません。

物件を売却すれば、引き渡し後になんらかの隠れた瑕疵が見つかり、売買契約を解除されたり、買主から損害賠償を請求される可能性があるためです。

よって、以下のような記述を売買契約書の特約事項に盛り込めば、売主は瑕疵担保責任を免れることができました。

  • 売主は、瑕疵担保責任を負わない
  • 売主の瑕疵担保責任は、免責とする

上記のような記述を売買契約書に記しつつ不動産などの目的物が売却されることを瑕疵担保責任免責と呼びます。

売主は瑕疵担保責任免責として目的物を売却すれば、瑕疵担保責任を免れます。

一方、瑕疵担保責任免責の特約がある不動産などの目的物を購入した買主は、引き渡しを受けた後に隠れた瑕疵が見つかったとしても、売主に契約の解除や損害賠償を請求できません。

ただし、売主が隠れた瑕疵があることを知りながら、それを買主に告げず、契約を結びつつ目的物を引き渡した場合は、瑕疵担保責任免責は適用されません。

瑕疵担保責任免責のポイント

  • 瑕疵担保責任免責とは、売主が一定の文言を契約書の特約事項に盛り込むことにより、旧民法によって規定されていた瑕疵担保責任を免れること
  • 瑕疵担保責任とは、旧民法によって規定されていた、契約を結びつつ売買される目的物の売主が負う責任のこと
  • 売主が売買される目的物に隠れた瑕疵があることを知っていながら買主に告げず、売買契約が結ばれた場合は、瑕疵担保責任免責は適用されない

なお、先述のとおり民法は令和2年に改正されましたが、改正後は瑕疵担保責任ではなく、売主は契約不適合責任を負うことと変更されました。

具体的には、契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容を満たさない欠陥があれば、買主は契約の解除や損害賠償の請求に加え、修補や代金の減額などを請求できるように変更されています。

そして、契約の解除や損害賠償の請求、修補や代金の減額を請求された売主は、契約不適合責任を果たしつつ対応しなくてはなりません。

しかしながら、契約不適合責任も瑕疵担保責任と同じく、売買契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」などと記述することにより免れることができます。

瑕疵担保責任を免れることを瑕疵担保責任免責と呼びますが、契約不適合責任を免れることは「契約不適合責任免責」と呼びます。

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8. 契約不適合責任と瑕疵担保責任の違い

瑕疵担保責任とは、旧民法によって規定されていた、売買された目的物の売主が負う責任です。

そして、瑕疵担保責任は、令和2年に民法が改正されることにより契約不適合責任に置き換わりました。

そこで気になるのが、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いです。

ここからは、瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いをわかりやすくご説明しましょう。

8-1. 「隠れた瑕疵」という表現の違い

旧民法における瑕疵担保責任では、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、買主は契約を解除できる(旧民法 第五百七十条)」と規定されていました。

隠れた瑕疵とは、見えない欠陥やキズなどを意味します。

これに対して改正後の民法では、「隠れた瑕疵」という表現はなくなり、「引き渡された目的物が、契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に、目的物の修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しを請求できる(新民法 第五百六十二条)」と変更されました。

法務省の資料によれば、旧民法を元にした判例により「瑕疵」は「契約の内容に適合しないこと」を意味するものと考え、国民にわかりやすいようにするために「隠れた瑕疵」という表現を削除し、「契約の内容に適合しないもの」と見直したとのことです。

法務省資料

契約不適合責任と瑕疵担保責任の違いは「隠れた瑕疵」という表現の有無

出典:法務省

この変更により売主は、隠れている、隠れていないにかかわらず、契約の内容に適合しない欠陥がある目的物を買主に引き渡せば、対応する責任を負うこととなります。

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8-2. 買主が請求できることの違い

旧民法における瑕疵担保責任では、「売買の目的物に隠れた瑕疵があり、そのために契約した目的を達成できないときは、買主は契約を解除できる。解除できないときは、損害賠償の請求のみができる(旧民法 第五百六十六条、第五百七十条)」と規定されていました。

改正後の民法による契約不適合責任では、「引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときは、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物や不足分の引渡し、代金の減額、損害賠償、契約の解除の請求、催告を必要としない契約の解除ができる(新民法 第五百六十二条、第五百六十三条、第五百六十四条)」と変更されています。

つまり、瑕疵担保責任では、買主は売主に契約の解除と損害賠償の請求のみが可能であったのに対し、契約不適合責任では、目的物の修補、代替物や不足分の引き渡し、代金の減額、契約の解除の請求もできるように見直されたというわけです。

旧民法の瑕疵担保責任 新民法の契約不適合責任
買主ができること 契約解除、損害賠償の請求 修補、代替物や不足分の引き渡し、代金の減額、損害賠償、契約解除の請求、催告を必要としない契約解除

この瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いにより、欠陥がある目的物を購入した買主は、より様々な方法で救済されることとなりました。

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8-3. 買主が権利を行使できる期間の違い

旧民法における瑕疵担保責任では、「契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を知ったときから1年以内にしなければならない(旧民法 第五百七十条、第五百六十六条)」と規定されていました。

改正後の民法による契約不適合責任では、「売主が契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知ったときから1年以内に売主に通知しないときは、買主は修補や代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができない(新民法 第五百六十六条)」と変更されています。

瑕疵担保責任
買主は、瑕疵があることを知ったときから1年以内に、売主に契約の解除や損害賠償の請求をしなければならない
契約不適合責任
買主は、契約の不適合を知ったときから1年以内に売主に通知すれば、修補や代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができる

つまり、瑕疵担保責任では、買主は瑕疵を知ってから1年以内に損害賠償などを請求する必要があったのに対し、契約不適合責任では、1年以内に通知をするだけで損害賠償などを請求できる権利が失われないこととなったというわけです。

法務省の資料によれば、この変更は「瑕疵を知ってから1年以内に損害賠償を請求しなければならないという規定は、買主の負担が重すぎる」という有識者からの意見があり、それを反映した結果であるとのことです。

法務省資料

契約不適合責任と瑕疵担保責任は、買主が権利を行使できる期間が違う

出典:法務省

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8-4. 任意規定であり、免責が適用されることは同じ

法律には、強制規定と任意規定があります。

強制規定とは、当事者の意思によって変更できない規定です。

これに対して任意規定とは、当事者の意思によって変更できる規定を指します。

瑕疵担保責任も契約不適合責任も民法にて定められていますが、民法のほとんどは任意規定です。

そして、瑕疵担保責任も契約不適合責任も任意規定であり、契約書の特約事項に一定の文言を含めることにより、瑕疵担保責任免責、または契約不適合責任免責にし、売主はそれらの責任を免れることができます。

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まとめ

契約不適合責任、契約不適合責任免責、瑕疵担保責任、瑕疵担保責任免責などをわかりやすく解説しました。

民法の規定により、契約を結びつつ引き渡された目的物の買主は追完請求権を有し、売主は契約不適合責任を負います。

追完請求権とは、契約を結びつつ引き渡された目的物に、契約の内容に適合しない欠陥があった場合に、売主に修補などを請求できる権利です。

契約不適合責任とは、契約を結びつつ引き渡した目的物に、契約の内容に適合しない欠陥があり、買主が追完請求権を行使した際に果たすべき責任を意味します。

契約不適合責任は、契約を結びつつ商品を売買する方や、業務を委託、または委託される方などは、必ず把握しておく必要があります。

特に、不動産を売買される予定がある方は、契約不適合責任に関する知識が欠かせません。

不動産を売買する際は、必ず売買契約を結びつつ目的物が引き渡されるため、契約不適合責任を理解しておけば、不動産を購入、または売却しつつ失敗するリスクを最小限に抑えることができます。

ご紹介した内容が、契約不適合責任をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年9月
記事公開日:2021年6月

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