路線価とは?わかりやすく解説

路線価とは、土地を相続した際に課せられる相続税や、土地を譲り受けた際に課せられる贈与税を計算する際に用いる土地の価額です。
路線価は、国税庁が公表する地図「路線価図」にて確認できますが、路線価図の見方は難しく、すぐに理解できるものではありません。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、路線価の意味をわかりやすく解説し、路線価図の見方もご紹介しましょう。
目次
- 1. 路線価とは、相続税や贈与税を計算する基準となる土地の価額
- 2. 路線価図の見方
- 2-1. 路線価図のアルファベットの意味
- 2-2. 2方向の道路に面し、路線価が2つある場合
- 3. 路線価図に路線価がない場合
- まとめ - 路線価は売買価格の80%程度になるのが通例
1. 路線価とは、相続税や贈与税を計算する基準となる土地の価額
まず、路線価をわかりやすくご説明しましょう。
路線価とは、国税庁が公表する、道路に面する宅地の1㎡あたりの価額です。
宅地とは「建物を建てるための土地」または「既に建物が建っている土地」であり、価額とは「価値から鑑みた価格」という意味です。

宅地の価額と聞くと売買価格をイメージしますが、路線価はそうではありません。
路線価は売買価格とは異なり、土地を相続した際に課せられる相続税や、土地を譲り受けた際に課せられる贈与税を算出する際に役立てられます。
たとえば、路線価が10万円の土地を100㎡相続した場合は「10万円×100㎡=1,000万円」と計算し、1,000万円の土地を相続したと見なされます。
そして、路線価から計算した土地の価額に相続税や贈与税の税率を掛け算するなどして相続税額や贈与税額が決定されます。
例を挙げると、路線価から計算した価額が1,000万円の土地を相続した場合は、1,000万円に税率である10%を掛け算し、その答えである100万円が相続税になるといった具合です。(
※ 実際の相続税は、控除額が差し引かれるなどしてもっと安くなるため留意してください )
売買価格は土地の売り主が自由に設定できるため、売買価格に税率を掛け算していては相続税額や贈与税額を公平に算出できません。
そのため、国税庁は毎年8月ごろに日本全国各地の路線価を公表します。
路線価から計算した土地の価額に税率を掛け算すれば、土地の相続税額や贈与税額が公平に算出されるというわけです。

なお、路線価は主に市街地に位置する宅地に設定され、郊外の宅地には設定されていないためご注意ください。
市街地に位置する宅地を相続した際に課せられる相続税や、譲り受けた際に課せられる贈与税は路線価から計算しますが、郊外に位置する土地の相続税や贈与税は「倍率方式」という方法で算出します。
倍率方式の詳細は、この記事の「3. 路線価図に路線価がない場合」にてご確認いただけます。
つづいて、路線価に関することを質問とその答えの方式でわかりやすくご説明しましょう。
- 路線価とは?
- 路線価とは、毎年8月ごろに国税庁が公表する、日本全国各地の市街地に位置する道路に面する宅地の1㎡あたりの価額です。
- 路線価はどのように役立てられますか?
- 路線価は土地の相続税や贈与税を計算する際に役立てられます。
- 路線価と実売価格や販売価格は同じですか?
- 路線価から計算した土地の価額と実売価格や販売価格は異なります。路線価は国税庁が公表する土地の価額であり、実売価格や販売価格は売り主が設定した土地の価格です。
路線価から計算した土地の価額は実売価格や販売価格より安くなるのが通例ですが、相場より大幅に安く売りに出される土地などはこの限りではないため留意してください。 - 地価公示価格と路線価の違いは?
- 地価公示価格とは、国土交通省が毎年3月ごろに公表する日本全国各地の2万数千か所の土地の標準的な価格であり、土地の売り主が販売価格を設定する際の指標となるべき価格です。
これに対して路線価は、毎年8月ごろに国税庁が公表する、土地の相続税や贈与税を計算する際の指標となる土地の価額となっています。
そして、路線価は、地価公示価格の80%程度になるのが通例です。 - 基準地価と路線価の違いは?
- 基準地価とは、各都道府県が毎年9月ごろに公表する、日本全国各地の約3万か所の土地の標準的な価格であり、地価公示価格と同じく土地の売買価格を設定する際の指標となる価格です。
一方、路線価は、土地の相続税や贈与税を計算するために、毎年8月ごろに国税庁が公表する日本全国各地の市街地に位置する宅地の価額となっています。
路線価は、基準地価の80%程度になるのが通例です。 - 路線価図とは?
- 路線価図とは「国税庁 路線価図・評価倍率表」にて閲覧できる、国税庁が公表する日本全国各地の路線価が記された地図です。
路線価図は、路線価を調査する際に役立てられます。 - 相続税路線価とは?
- 相続税路線価とは国税庁が公表する、土地を相続した際に課せられる相続税額を計算するための土地の価額であり、路線価と同じ意味です。
2. 路線価図の見方
路線価とは、土地を相続したり譲り受けた際に課せられる相続税や贈与税を計算する基準となる宅地1㎡あたりの価額です。
そして、路線価は「国税庁 路線価図・評価倍率表」で閲覧できる路線価図にて調査できます。
ここから、路線価図の見方をわかりやすくご説明しましょう。
「国税庁 路線価図・評価倍率表」をご覧いただくと以下のように青を基調としたページが表示され、日本地図が大きく描かれています。

日本地図から路線価を調査したい地域をクリックすれば、以下のような「財産評価基準書目次」というページが表示されます。

上記の「財産評価基準書目次」の上部にある「路線価図」というリンクをクリックすれば、以下のような市区町村名が並んだ「財産評価基準書」というページが表示されます。

上記の「財産評価基準書」というページから路線価を調査したい市区町村名をクリックすれば、以下のようなその地域の地名が並んだ「路線価図・町丁名索引」というページが表示されます。

上記の「路線価図・町丁名索引」というページに記されている地名の一覧から、路線価を調査したい箇所の「路線価図ページ番号」をクリックすれば、以下のような地図が表示されます。

上記の地図が路線価図であり、路線価図の道路を見ると以下のように「230D」「220D」「225D」などと数字とアルファベットが記されていますが、アルファベットを除く数字が路線価(千円単位)です。

たとえば、路線価図に「230D」と書かれている道路に面する宅地は、路線価は23万円(230×1,000円=230,000円)です。
また、路線価図に「220D」と書かれている道路に面する宅地は、路線価は22万円(220×1,000円=220,000円)となります。
路線価図の道路には「230D」「220D」など、数字とアルファベットが記されていますが、アルファベットを除いた数字が路線価のため留意してください。
なお、先にご説明しましたが、路線価とは宅地1㎡あたりの価額です。
よって、路線価にその土地の広さ(㎡)を掛け算すれば、路線価から計算したその土地の価額が算出できます。
例を挙げると、路線価が23万円であり広さが100㎡の宅地は「23万円×100㎡=2,300万円」と計算し、路線価から計算したその土地の価額は2,300万円です。
路線価が22万円であり広さが50㎡の宅地は「22万円×50㎡=1,100万円」と計算し、路線価から計算したその土地の価額は1,100万円となります。
路線価図の見方の詳細は「国税庁 路線価図・評価倍率表|路線価図等の閲覧の仕方」にてご確認いただけます。
2-1. 路線価図のアルファベットの意味
路線価図には「230D」など、数字とアルファベットが記されていますが、先にご紹介したとおり数字が路線価です。
そこで気になるのがアルファベットの意味ですが、アルファベットは借地権割合を意味します。
ここから、路線価図に記されているアルファベットの意味をわかりやすくご説明しましょう。
突然ですが皆さん、借地権という不動産用語をご存じでしょうか。
借地権とは、土地を借り、借りた土地に家を建てるなどして利用できる権利です。
たとえば、土地の所有権を持つ地主のAさんが「家を建てるなどして利用して構わない」という条件を付け、地代(借り賃)を取りつつBさんに土地を貸したとします。
この状況において土地の借り主のBさんは、「土地を借り、借りた土地に家を建てるなどして利用できる権利」を手に入れたことになります。
このBさんが手に入れた権利が借地権です。

借地権は「土地を借り、借りた土地に家を建てるなどして利用できる権利」であり、所有権(物を支配する権利)ではありませんが、所有権と同じく相続や贈与ができます。
また、所有権を相続したり贈与を受けると相続税や贈与税が課せられますが、借地権を相続したり贈与を受けた場合も相続税や贈与税が課せられます。
そして、借地権の相続税額や贈与税額も所有権の相続税額や贈与税額と同じく、路線価から計算した土地の価額から算出します。
しかし、借地権は所有権ではなく、あくまで土地を借り、借りた土地に家を建てるなどして利用できる権利です。
よって、所有権と借地権の相続税額や贈与税額が同じでは公平ではありません。
借地権の相続税や贈与税は、所有権の相続税や贈与税より安くあるべきです。
そこで登場するのがアルファベットです。
アルファベットは借地権割合を意味し、アルファベットと各割合は以下のとおりとなっています。
路線価の後ろにあるアルファベットは借地権割合
アルファベット | 借地権割合 |
---|---|
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
たとえば、土地の所有権を相続した場合は、以下の式で相続税を計算します。
土地の所有権を相続した場合の相続税の計算式
路線価から計算した土地の価額×相続税の税率=相続税額
上記の式で、路線価から算出した価額が1,000万円の土地を相続した場合の相続税を計算すると以下のようになり、相続税額は100万円です。( ※ 実際に相続税を支払う際は控除額を差し引き、もっと安くなるため留意してください )
1,000万円(路線価から算出した土地の価額)×10%(1,000万円の資産を相続した場合における相続税の税率)=100万円(相続税額)
しかし、借地権を相続した場合は、借地権割合を含めつつ以下の式で相続税を計算します。
借地権を相続した場合の相続税の計算式
路線価から計算した土地の価額×借地権割合(アルファベットの割合)×相続税の税率=相続税額
上記の式で、アルファベットがDと付いている土地の借地権を相続した場合の相続税を計算すると以下のようになり、相続税額は60万円です。
1,000万円(路線価から算出した土地の価額)×60%(アルファベットDの借地権割合)×10%(1,000万円の資産を相続した場合における相続税の税率)=60万円(相続税額)
上記のように借地権を相続した場合は借地権割合を含めつつ相続税を計算し、所有権の相続税より税額が安くなります。
借地権の贈与を受けた場合の贈与税額を計算する際も同じであり、借地権割合を含めつつ計算し、所有権の贈与税より税額が下がります。
余談ですが、誰でもわかる不動産売買では、借地権割合をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。
借地権割合の詳細をお知りになりたい方がいらっしゃいましたら、是非ご覧ください。
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2-2. 2方向の道路に面し、路線価が2つある場合
路線価を調べようとするものの、該当する土地が角地であり、2本の道路に接している場合は、それぞれの道路に異なる路線価が記されていることがあります。
その場合、それぞれの路線価に奥行き補正率という数値を掛け算するなどして正確な路線価を計算しますが、概ね高い方の路線価を選ぶことで大体の価額を算出することが可能です。
角地の価額を路線価から算出する方法の詳細は、国税庁のサイト内のページ「正面路線の判定(1)」にて、奥行き補正率は「奥行価格補正率表」にて確認できます。
3. 路線価図に路線価がない場合
路線価は主に市街地のみに設定され、郊外や田舎などには設けられていません。
そのため、郊外や田舎などの土地の路線価を知りたいと路線価図を見ると、路線価が記されていないことがあります。
路線価図に路線価が記されていない場合は、倍率方式という方法でその土地の価額を計算します。
倍率方式とは、その土地の固定資産税評価額に、国税庁が公表する倍率を掛け算しつつ価額を計算する方法です。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市区町村が評価したその不動産の価額であり、その土地の固定資産税評価額は、毎年4月頃にご自宅に届く固定資産税の納税通知書や、市区町村役場に設置されている固定資産課税台帳で確認できます。
そして、国税庁が公表する倍率は、地域によって異なりますが概ね1.1倍です。
よって、路線価図に路線価が記されていない土地の価額は以下の式で計算します。
路線価がない土地の価額を計算する式
固定資産税評価額×倍率(概ね1.1倍)=その土地の価額
その土地の正確な倍率は、「国税庁 路線価図・評価倍率表」に描かれている日本地図からその土地が所在する都道府県をクリックし、表示される「財産評価基準書目次」というページの「評価倍率表」という項目から確認することが可能です。

まとめ - 路線価は売買価格の80%程度になるのが通例
路線価の意味や、路線価図の見方をわかりやすくご説明しました。
路線価とは国税庁が公表する、道路に面する宅地の1㎡あたりの価額であり、土地の相続税や贈与税を計算する際に役立てられます。
日本全国各地の路線価は、「国税庁 路線価図・評価倍率表」にて閲覧できる路線価図で調査することが可能です。
ただし、路線価は市街地のみに設定され、郊外などには設定されていないため留意してください。
路線価がない土地の価額は、その土地の固定資産税評価額に1.1倍などを掛け算する「倍率方式」という方法で計算します。
なお、本文中で路線価は売買価格とは異なるとご紹介しましたが、路線価から計算した土地の価額は売買価格の80%程度になるのが通例です。
これは、路線価は地価公示価格の80%程度になるように設定されていることが理由です。
地価公示価格とは、国土交通省が公表する日本全国各地の2万数千か所の土地の標準的な価格であり、土地が売買される際は地価公示価格を参考に値付けされるのが望ましいとされます。
路線価は売買価格の参考となる地価公示価格の80%程度になるように設定されるため、路線価から計算した価額は、売買価格の80%程度になるのが通例というわけです。
ただし、土地が売買される際は、必ず地価公示価格を参考に値段が付けられるわけではありません。
たとえば、相場より大幅に高値や安値の土地は、地価公示価格と大きく掛け離れています。
地価公示価格と大きく掛け離れた価格で売買される土地は、その売買価格の80%が路線価になることはありません。
よって、路線価から計算した土地の価額が売買価格の80%程度というのは通例であり、必ずしもその通りではないことを留意してください。
ご紹介した内容が、路線価をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2021年2月
記事公開日:2018年8月