収益還元法とは?わかりやすく解説

収益還元法とは?わかりやすく解説

収益還元法とは、不動産鑑定士が賃貸マンションなどの賃貸用不動産、企業が事業のために使用するビルなどの事業用不動産の試算価格を求める際に用いる手法です。

収益還元法をわかりやすく簡単に解説しましょう。

目次

1. 収益還元法とは、賃貸用不動産や事業用不動産の試算価格を求める手法

それでは、収益還元法をわかりやすく簡単に解説します。

ところで、皆さんは不動産鑑定士という資格をご存知でしょうか。

不動産鑑定士の資格とは、土地や建物などの不動産の適正な価格を判定し、鑑定評価書としてまとめることができる資格であり、不動産鑑定士の資格を有しつつ不動産の経済価値を評価する職業に就く者を不動産鑑定士と呼びます。

不動産鑑定士が判定した不動産の適正な価格は、不動産を売買する際の価格や、不動産を貸し借りする際の貸し賃や借り賃の額を決定する際などの指標として活用されます。

そして、不動産鑑定士が、家賃を取りつつ人に貸すことにより収益を得る賃貸マンションや賃貸アパートなどの賃貸用不動産、会社や企業が自らが行う事業の場として使用するビルや事務所などの事業用不動産の試算価格を求める際に用いる手法が収益還元法です。

収益還元法とは、その賃貸用不動産や事業用不動産を所有することにより将来得ると期待される収益を基に、その賃貸用不動産や事業用不動産の試算価格を求める手法です。

収益とはいわゆる「儲け」であり、収益還元法では、その賃貸用不動産や事業用不動産を所有することにより得ると期待される儲けの額を基に、その賃貸用不動産や事業用不動産の適正な価格を求めます。

収益還元法とは、所有することにより将来得ると期待される収益から不動産の試算価格を求める手法

具体的には、不動産鑑定士が収益還元法を用いて賃貸用不動産や事業用不動産の資産価格を求める際は「直接還元法」または「DCF法」という方法を用います。

直接還元法では、その不動産を所有することにより将来得ると期待される一定の期間の収益などを基に試算価格を求めます。

DCF法とは「Discounted Cash Flow法」の略であり、その不動産を所有することにより将来得ると期待される毎期の収益などを基に試算価格を求めます。

直接還元法よりDCF法の方が多数の要素を用いて不動産の試算価格を求めるため、DCF法で求められた価格は直接還元法で求めた価格より説得力があるとされます。

そして、収益還元法により求めた不動産の試算価格を収益価格と呼びます。

ポイント
収益還元法により求めた不動産の試算価格を収益価格と呼ぶ

収益還元法の概要をわかりやすく簡単に図解でまとめると以下のとおりです。

収益還元法には直接還元法とDCF法があり、収益還元法により求めた不動産の試算価格を収益価格と呼ぶ

つづいて、直接還元法とDCF法の詳細をわかりやすく簡単に解説します。

なお、収益還元法の詳細は、国土交通省が定めた不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する際の基準「不動産鑑定評価基準」の「総論 第7章 鑑定評価の方式 第1節 価格を求める鑑定評価の手法 Ⅳ 収益還元法」にてご確認いただけます。

収益還元法の正確な詳細をお知りになりたい方は、不動産鑑定評価基準をご覧ください。

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2. 収益還元法の直接還元法とDCF法を簡単に解説

収益還元法とは、不動産鑑定士が賃貸用不動産や事業用不動産などの試算価格を求める際に用いる手法です。

そして、収益還元法には、直接還元法とDCF法があります。

ここから、直接還元法とDCF法をわかりやすく簡単に解説しましょう。

なお、これ以降「評価対象となる不動産」という言葉を幾度か用いますが、その意味は、収益還元法を用いて試算価格を求める賃貸用不動産や事業用不動産を意味するため留意してください。

2-1. 直接還元法とは?わかりやすく解説

直接還元法では、評価対象となる不動産を所有することにより得ると期待される一定の期間の純収益を基に、評価対象となる不動産の試算価格を求めます。

具体的には、評価対象となる不動産を所有することにより得ると期待される一定の期間の純収益を還元利回りと呼ばれる率で割り算しつつ試算価格を求めます。

直接還元法で試算価格を求める方法を図解でわかりやすく解説すると以下のとおりです。

収益還元法の直接還元法とは?わかりやすく解説

直接還元法を用いて不動産の試算価格を求める正確な式は、以下のようになります。

収益還元法の直接還元法の計算式

式に含まれる各用語をわかりやすく簡単に解説すると以下のとおりです。

P:求める不動産の収益価格
求める不動産の収益価格とは、収益還元法の直接還元法を用いて求める、評価対象となる不動産の試算価格です。

収益還元法を用いて求める不動産の試算価格を収益価格と呼びます。
a:一期間の純収益
一期間の純収益とは、評価対象となる不動産を所有することにより得ると期待される一定の期間の純収益であり、一定の期間とは一般には1年です。

純収益とは、評価対象となる不動産を所有することにより得る収益の総額から、評価対象となる不動産を所有するために支払う必要がある維持費や管理費、修繕費用、固定資産税、都市計画税などの経費を差し引いた額です。
R:還元利回り
還元利回りとは、その不動産を所有することにより得る一期間(一期間は一般に1年です)の収益を表した率です。

具体的には、「評価対象となる不動産の一期間の純収益」を「評価対象となる不動産の価格」で割り算した答えに100を掛け算しつつ計算します。

たとえば、評価対象となる不動産の一期間の純収益が1,000万円であり、評価対象となる不動産が1億円で売却できると考えられる場合は「1,000万円÷1億円×100=10%」と計算し、還元利回りは10%となります。

ただし、期待通りの価格で売却できるとは限らないため、還元利回りは評価対象となる不動産と条件や状況が類似する不動産の価格などを参考に考慮するのが通例です。

還元利回りの詳細は、誰でもわかる不動産売買で公開中のコンテンツ「還元利回りとは?わかりやすく解説」にてご紹介しています。

還元利回りが気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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2-2. DCF法とは?わかりやすく解説

直接還元法は、評価対象となる不動産を所有することにより将来得ると期待される一定の期間の純収益などを基に試算価格を求めます。

これに対してDCF法は、評価対象となる不動産を所有することにより将来得ると期待される毎期の純収益などを基に試算価格を求めます。

具体的には、評価対象となる不動産を所有することにより得ると期待される毎期の純収益を現在の価値に換算した額の合計と、評価対象となる不動産を将来売却できると予測される価格を現在の価値に換算した額を合計しつつ試算価格を求めることとなります。

収益還元法のDCF法で不動産の試算価格を求める方法を図解でわかりやすく解説すると以下のとおりです。

収益還元法のDCF法とは?わかりやすく解説

収益還元法のDCF法を用いて不動産の試算価格を求める正確な式は、以下のようになります。

収益還元法のDCF法の計算式

式に含まれる各用語の意味をわかりやすく簡単に解説すると以下のとおりです。

P:求める不動産の収益価格
求める不動産の収益価格とは、収益還元法のDCF法を用いて求める不動産の試算価格であり、収益還元法を用いて求める不動産の試算価格を収益価格と呼びます。
ak:毎期の純収益
毎期の純収益とは、評価対象となる不動産を所有する期間中に得ると期待される各期の純収益です。

一期は一般に1年であり、各期の純収益とは、一般に一年ごとの純収益を意味します。

純収益とは、評価対象となる不動産を所有することにより得る収益の総額から、評価対象となる不動産を所有するために支払う必要がある維持管理費、固定資産税、損害保険料などの経費を差し引いた額です。

評価対象となる不動産を所有することにより得る収益の総額を「総収益」、評価対象となる不動産を所有するために必要となる費用の総額を「総費用」と呼び、純収益は総収益から総費用を差し引きつつ計算します。

なお、毎期の純収益は一定ではないため留意してください。

たとえば、賃貸用不動産であれば、築年数が経過することにより修繕費用が嵩みつつ空室が目立つようになり、徐々に純収益が下がる傾向があります。

DCF法における毎期の純収益は、毎期同額ではなく期によって異なります。
Y:割引率
割引率とは、評価対象となる不動産を所有することにより将来得ると期待される純収益を現在の価値に換算する際や、評価対象となる不動産を将来売却する際に売却できると予測される価格を現在の価値に換算する際に用いる率です。

たとえば、評価対象となる不動産が1年後に1億円で売却できると予想され、割引率が10%であれば「1億円÷(1+0.10)=9,091万円」と計算し、評価対象となる不動産の現在の価値は9,091万円などと考えます。

具体的な割引率は、評価対象となる不動産の利回りや還元利回り、評価対象となる不動産と条件や状況が類似する不動産の利回りなどを参考に同程度に設定されます。

利回りとは、その不動産を所有することより得る利益を表した率であり、「その不動産の年間の収益÷その不動産の価格×100」と計算します。

計算例を挙げると、年間の収益が1,000万円、価格が1億円の不動産であれば「1,000万円÷1億円×100=10%」と計算し、利回りは10%です。
Pr:復帰価格
復帰価格とは、評価対象となる不動産を将来売却する際に、売却できると予測される価格です。
n:保有期間
保有期間とは、評価対象となる不動産を保有する年数です。

売却する予定がない不動産の試算価格を求める場合は、保有期間は10年や5年などに設定されます。

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まとめ - 収益還元法以外にも原価法と取引事例比較法がある

収益還元法をわかりやすく簡単に解説しました。

収益還元法とは、不動産鑑定士が賃貸用不動産や、事業用不動産の試算価格を求める際に用いる手法であり、評価対象となる不動産を所有することにより将来得ると期待される収益などを基に、評価対象となる不動産の試算価格を求めます。

賃貸用不動産とは、収益を得るために家賃を取りつつ人に貸す賃貸マンションや賃貸アパート、賃貸ビル、貸事務所、貸店舗などを意味します。

事業用不動産とは、会社や企業、事業主が所有しつつ事業のために使用するビルや店舗、事務所などの不動産です。

そして、収益還元法は、大きく直接還元法とDCF法に分類されます。

直接還元法では、対象となる不動産を所有することにより得ると期待される一定の期間の収益から、評価対象となる不動産の試算価格を求めます。

DCF法では、評価対象となる不動産を所有することにより得ると期待される毎期の収益と、評価対象となる不動産を将来売却できると予測される価格などから、評価対象となる不動産の試算価格を求めます。

直接還元法よりDCF法の方が多数の指標を用いて試算価格を求めるため、説得力がある試算価格を求めることが可能です。

正確な収益還元法の意味は、国土交通省が定めた不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する基準「不動産鑑定評価基準」にて確認することが可能です。

収益還元法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、不動産鑑定士が不動産の試算価格を求める際は、今回ご紹介した収益還元法に加え、原価法と取引事例比較法という方法も用います。

原価法とは、評価対象となる不動産と同等の不動産を入手するために必要となる費用などを基に、評価対象となる不動産の試算価格を求める手法です。

取引事例比較法とは、評価対象となる不動産と条件や状況が類似する不動産が売買された際の価格の事例から、評価対象となる不動産の試算価格を求める手法です。

誰でもわかる不動産売買では、原価法と取引事例比較法をわかりやすく解説するコンテンツも公開しています。

不動産鑑定士が不動産の適正な価格を判定する方法にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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ご紹介した内容が、収益還元法をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年1月
記事公開日:2018年7月

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