土地を相続。税金はいくら?相続税を計算する方法をわかりやすく解説

土地などの不動産を相続すると心配になるのが、いわゆる相続税と呼ばれる税金で、払えないと心配する方が大勢いらっしゃいます。
しかし、相続税は、余程の資産を相続しない限り課せられず、遺産を相続して税金がかかる人は、全体の10%未満です。
とはいうものの、土地を相続する予定がある方は、やはり税金が心配になります。
そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、土地の相続税が心配な方へ向けて、土地の相続に課せられる相続税を計算する方法や、相続税がいくらまで無税かなどをわかりやすくご紹介しましょう。
目次
1. とても重要! 相続税が算出される仕組み
土地の相続に課せられる税金を計算する方法をご紹介する前に、相続税が算出される仕組みをご紹介しましょう。
とても重要です。ぜひお読みください。
相続税は、遺産総額から基礎控除を差し引き、残った額に税率を掛けて算出されます。
そのため、土地や建物、株券など、複数の遺産を相続する場合は、土地の相続税だけを計算することは、事実上できません。
よって、この記事では、土地だけを相続すると仮定し、土地の相続税を算出する方法をご紹介します。
みなさん、ぜひ注意してください。
2. 遺産総額が「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」まで無税
土地を相続すると税金が心配ですが、相続税には、以下の基礎控除が設けられています。
相続税の基礎控除
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
※ 法定相続人とは、配偶者や子供、親、兄弟姉妹などを表す
つまり、配偶者と子供1人が土地などの遺産を相続する場合は、遺産総額が4,200万円に満たない場合は、税金がかからないというわけです。
また、配偶者と子供2人が遺産を相続する場合は、遺産相続が4,800万円に満たない場合は無税になります。
ただし、先にご紹介したとおり、相続税は遺産の総額に課せられるものであり、土地や建物、株券など、複数の遺産を相続する場合は、それらの価値の総額に対して課税されます。
そして、ご紹介した基礎控除も、土地や建物、株券などの複数の遺産を相続する場合は、相続する遺産の総額に対して適用されるため、注意してください。
3. 土地の相続税を計算する方法と流れ
それでは、土地の相続に課せられる税金である、相続税を計算する方法をわかりやすく解説しましょう。
土地の相続に課せられる相続税は、以下の流れで計算します。
3-1. 土地の価格を知る
相続税は、相続する資産の価格に税率を掛けて計算します。
よって、まずは相続する土地の価格を知ることが大切です。
相続する土地の価格は、売買価格ではなく、概ね売買価格より安い、路線価や固定資産税評価額で算出します。
路線価とは、土地の相続や贈与に課せられる相続税や贈与税を算出するために、国税庁が設定した土地の1㎡あたりの価格で、国税庁のサイト「路線価図・評価倍率表」にて公開されている、路線価図で調べることが可能です。
路線価図の見方は、やや難しいですが、当サイトのコンテンツである「路線価とは? 路線価図の見方をわかりやすく解説」にて、わかりやすくご紹介しています。
ぜひご覧ください。
なお、路線価は市街地のみに設定され、郊外の土地には設定されていません。
路線価が設定されていない土地の価格は、その土地の固定資産税評価額に、概ね1.1倍を乗算して算出します。
固定資産税評価額は、毎年4月から6月ごろにご自宅に郵送される、固定資産税の納付書に記載されています。
3-2. 相続する土地の価格から、基礎控除分を差し引く
相続する土地の価格を知ることができれば、「遺産総額が「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」まで無税」でご紹介したように、その価格から基礎控除分を差し引き、課税遺産額を算出します。
相続税は、この課税遺産額に税率を掛け算しつつ算出されるため、留意してください。
なお、先にご紹介しましたが、基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。
法定相続人とは、主に配偶者や子供、親など、相続する権利がある者を表しますが、戸籍などを取り寄せつつ、慎重に確認してください。
3-3. 課税遺産額を法定相続人で按分する
課税遺産額が計算できれば、法定相続人で按分し、それぞれの相続分を算出します。
相続分は、法定相続分により定められ、相続人の構成により変化し、以下のとおりです。
なお、この際に算出する、各相続人の相続分は、実際に相続する割合ではなく、法定相続分により定められた割合のため、注意してください。
法定相続分
相続人 | 法定相続分 |
---|---|
配偶者と子供1人 | 配偶者も子供も2分の1 |
配偶者と子供複数人 | 配偶者が2分の1、残りの2分の1を子供が分配 |
配偶者と親1人 | 配偶者が3分の2、親は3分の1 |
配偶者と親2人 | 配偶者が3分の2、残りの3分の1を親が分配 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者が4分の3、残りの4分の1を兄弟姉妹が分配 |
以上が法定相続分です。
法定相続分に基づいて計算例を挙げると、基礎控除分を差し引いた、課税遺産額が1億円の土地を配偶者と子供1人が相続した場合は、以下のようになり、それぞれの相続分は5,000万円となります。
配偶者と子供1人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合の法定相続分
・配偶者 ⇒ 5,000万円
・子供 ⇒ 5,000万円
また、基礎控除分を差し引いた、課税遺産額が1億円の土地を配偶者と子供2人が相続した場合は、以下のようになり、配偶者の相続分は5,000万円、子供は2,500万円ずつです。
配偶者と子供2人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合の法定相続分
・配偶者 ⇒ 5,000万円
・子供 ⇒ 2,500万円ずつ
3-4. 各相続人の法定相続分に税率を乗算し、相続税を算出する
法定相続分により、各相続人の相続分が計算されれば、各相続人の相続分に、相続税の税率を掛け算します。
相続税の税率は、相続する金額により変化する累進課税方式で、以下のとおりです。
なお、税率に応じて、基礎控除とは別の控除が設けられ、算出した額から差し引くことができます。
相続税の税率と控除額
相続分 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 5% | 7,200万円 |
上記に基づいて、親と子供1人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合は、以下のように計算し、それぞれの相続税は800万円ずつです。
配偶者と子供1人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合の相続税額
・配偶者 ⇒ 5000万円(相続分) × 30%(税率) - 700万円(控除額) = 800万円
・子供 ⇒ 5000万円(相続分) × 30%(税率) - 700万円(控除額) = 800万円
また、親と子供2人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合は、以下のように計算し、それぞれの相続税額は、5,000万円と2,500万円になります。
配偶者と子供2人が、課税遺産額1億円の土地を相続した場合の相続税額
・配偶者 ⇒ 5000万円(相続分) × 30%(税率) - 700万円(控除額) = 800万円
・子供 ⇒ 2500万円(相続分) × 15%(税率) - 50万円(控除額) = 325万円
3-5. 実際の相続分に応じて、支払う相続税額が決定される
ここまでは、法定相続分で定められた相続分から、各相続人が支払う相続税を計算しました。
土地を1人で相続する場合や、複数の相続人で法定相続分どおりに相続する場合は、ここまでにご紹介した計算方法から算出された相続税額が課せられます。
しかし、複数の相続人が土地を相続する場合は、法定相続分どおりに相続するとは限りません。
たとえば、相続人が配偶者と子供1人の場合の法定相続分は、どちらも2分の1ずつですが、実際に相続する割合は、配偶者が3分の2、子供が3分の1の場合があります。
また、相続人が配偶者と子供2人の場合の法定相続分は、配偶者が2分の1、子供が4分の1ずつですが、実際は、全ての相続人が3分の1ずつ分け合うこともあります。
相続分は、相続人が協議しつつ、決定するものです。
そのため、法定相続分どおりに遺産が分配されない場合は、法定相続分から算出された、各相続人に課せられた相続税額は、公平ではありません。
よって、複数の相続人が法定相続分ではなく、協議しつつ独自の割合で土地を相続する場合は、法定相続分から算出した、各相続人の相続税額を合計し、もう一度按分しなおし、各相続人が支払う相続税額が決定されます。
その際の按分は、実際に相続する割合に応じて行います。
法定相続分と異なる割合で、土地を相続する場合の相続税の算出方法
1. 法定相続分から算出した、各相続人の相続税額を合計する
2. 合計した相続税額を、各相続人が実際に相続する割合で按分する
法定相続分から算出した相続税額の例
相続人 | 法定相続分 | 相続税額 |
---|---|---|
配偶者 | 2分の1 | 800万円 |
子供1人 | 4分の1 | 325万円 |
子供1人 | 4分の1 | 325万円 |
合計1,450万円 |
実際に相続する割合で按分された相続税額の例
相続人 | 実際に相続する割合 | 実際に課せられる相続税額 |
---|---|---|
配偶者 | 3分の1 | 483万3千円 |
子供1人 | 3分の1 | 483万3千円 |
子供1人 | 3分の1 | 483万3千円 |
合計約1,450万円 |
4. 配偶者には「配偶者控除」が適用され、1億6,000万円まで無税
土地を相続した場合における、相続税を計算する方法をわかりやすくご紹介しました。
土地を相続すると税金が心配ですが、相続税には「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という基礎控除が設けられているため、よほど価値のある土地を相続したり、土地と共に高額な資産を相続しない限り、課税されることはないといえそうです。
また、配偶者には、「5. 実際の相続分に応じて、支払う相続税額が決定される」で算出した、実際に支払う相続税額から、さらに配偶者控除が適用されます。
配偶者控除とは、配偶者のみに適用される特別な控除で、配偶者の相続税額が1億6,000万円に満たない場合は、配偶者に課せられた相続税が全て控除されるというものです。
よって、配偶者の方が相続税を心配する必要は、さらに「ない」といえます。
ご紹介した情報が、皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2018年8月