中古住宅を購入する前にアスベストの使用状況を調査する方法

中古住宅の購入前にアスベストを調査する方法

中古住宅を購入する際は、アスベスト使用の有無が気になります。

中古住宅にアスベストが使われているか否かは、築年数などで予想できますが、確実ではありません。

そこで、今回の「誰でもわかる不動産売買」では、中古住宅の購入を検討するもののアスベストが気になる方へ向けて、中古住宅にアスベストが使用されているか調査する方法をご紹介しましょう。

目次

1. 日本アスベスト調査診断協会の会員に調査を依頼する(確実性:高)

アスベスト調査は誰もが実施できるわけではありません。

購入を希望する中古住宅にアスベストが使われているか否かは、「建築物石綿含有建材調査者」など、国土交通省が指定した専門機関が実施するアスベスト調査に関する講習を受けた者だけが正確に調査できます。( その詳細は国土交通省のホームページ「建築物にアスベストが使用されているか調査する資格があるのでしょうか」にてご確認いただけます )

中古住宅のアスベストの使用状況は、国土交通省が指定した講習を受けた者しか正確に調査できない

アスベスト調査に関する講習を受けた者は、日本アスベスト調査診断協会などの会員になり、アスベストに関する最新の知識を共有しつつアスベスト被害の撲滅に努めています。

日本アスベスト調査診断協会とは、アスベスト調査に関する講習を受けた者を統括する協会です。

そのため、中古住宅の購入を希望するもののアスベストが気になる場合は、売買契約を締結する前に売り主の承諾を得つつ、日本アスベスト調査診断協会に登録する会員による調査を実施するのが良いでしょう。

そうすれば、最も確実に中古住宅のアスベストの使用状況を調査できます。

日本アスベスト調査診断協会に登録する会員は、同協会の公式サイト内に設けられたページ「日本アスベスト調査診断会会員一覧|NADA 日本アスベスト調査診断協会」にて確認することが可能で、同ページでは、各会員が所属する企業や団体への連絡先も記載されています。

なお、調査には費用が掛かりますが、相場は3~5万円程度などであり、売主の希望により購入前の中古住宅にアスベスト調査を行う場合は、売主が費用を負担するのが通例です。

また、購入前の中古住宅のアスベストの使用状況を調査する場合は、解体を要する壁内の調査などはできず、露出している建材のみの調査となるため留意してください。

2. 売り主に問い合わせ、設計図書で確認する(確実性:中)

建築業者は、完成した建物を建築主に引き渡す際に設計図書を手渡します。

設計図書とは、建物の図面や、使用した建材などが記載された書類であり、建築時にアスベストが使用された中古住宅は、設計図書にその旨が記載されています。

設計図書を見れば、中古住宅が新築された時点におけるアスベスト使用状況が確認できる

そのため、中古住宅の購入を希望するもののアスベストが気になる場合は、売買契約を締結する前に売り主から設計図書を手に入れ、内容を確認すればアスベスト使用の有無を判断できます。

ただし、新築時はアスベストが未使用であっても、その後に増改築やリフォームを行っている場合は、その際にアスベストが使用された可能性があります。

設計図書に記されているのは、その中古住宅が建築された時点の情報です。

また、建築業者によっては、使用した建材の全てを設計図書に記載しないことがあります。

たとえば、アスベストを使用したにもかかわらず、その旨を設計図書に記載しないなどです。

よって、設計図書にアスベストの使用が記載されていないからといって、完全に安心できるわけではないため注意してください。

なお、全ての中古住宅の売り主が設計図書を所有しているわけではなく、築年数が古い中古住宅や、親から相続した中古住宅などは設計図書を紛失していることがあるため留意してください。

3. 重要事項説明でアスベスト調査の有無を確認する(確実性:低)

中古住宅を購入する際は、売り主と売買契約を締結しますが、事前に中古住宅を仲介する不動産業者から重要事項説明を受けます。

重要事項説明とは、法的に受ける制限、水道や電気の引き込み状況など、その中古住宅の詳細や現状が口頭にて説明されるもので、アスベストの使用に関する調査の実施状況も伝えられます。

重要事項説明では、アスベスト調査の有無と調査結果を確認できる

そして、中古住宅にアスベストに関する調査が実施されている場合は、あわせて調査結果も伝えられます。

そのため、重要事項説明を受ければ、中古住宅のアスベスト調査に関する情報を得ることが可能です。

ただし、中古住宅にアスベスト調査が実施されていない場合は、重要事項説明で「アスベスト調査は実施されていない」と伝えられるのみであり、必ずアスベストの使用状況を確認できるわけではないため注意してください。

まとめ - 売買契約締結前の調査は、売り主の承諾が欠かせない

中古住宅の購入を希望するもののアスベストが気になる方へ向けて、アスベストの有無を調査したり、確認する方法をご紹介しました。

中古住宅のアスベストの使用状況を確認するには、以下の3つの方法があります。

購入前の中古住宅のアスベストの調査方法

調査方法 信頼性
日本アスベスト調査診断協会に登録する会員に調査を依頼する 高い
売主から設計図書を入手し、アスベストの使用状況を確認する 中程度
重要事項説明で確認する 低い

住宅は建築基準法に則り建築されますが、平成18年10月1日に同法律が改正され、アスベストの使用が規制されました。

これにより、平成18年10月1日以降に建築された中古住宅は、アスベストが使用されていないと予想できますが、現地調査を実施しなければアスベストが使用されていないと断言できません。

言い方を変えれば、平成18年10月1日以前に建築された中古住宅は、アスベストが使用されている可能性があるともいえます。

中古住宅のアスベストの使用状況は建築日や築年数からも予想できるが確実ではない

よって、中古住宅の購入を希望するもののアスベストが気になる場合は、日本アスベスト調査診断協会に所属する会員が在籍する企業などに調査を依頼するのが確実です。

なお、購入を希望する中古住宅にアスベスト調査を実施し、アスベストが確認されれば購入を中止したいと希望する場合は、売主と売買契約を締結する前に調査を実施しなければなりません。

理由は、売買契約を締結した後に調査を実施し、アスベストの使用が確認されたからといって、簡単に売買契約を解除することはできないためです。

しかし、売買契約を締結する前の中古住宅にアスベスト調査を実施するには売り主の承諾が必要であり、大抵の売り主は、自分が売りに出す中古住宅の欠陥を知りたくないものです。

自分が売りに出す中古住宅に欠陥があると確認された場合は、物件が売れなくなったり、大幅な値下げを迫られる可能性があります。

そのため、売買契約を締結する前の中古住宅にアスベスト調査を実施したいと希望する場合は、その中古住宅を仲介する不動産業者と相談しつつ、慎重に売り主を説得するように心掛けてください。

売買契約前のアスベスト調査は、買主にとってはメリットがありますが、売主にとってのメリットは極めて小さいといえます。

ご紹介した内容が、皆様のお役に立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2020年3月
記事公開日:2019年8月

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