位置指定道路とは?わかりやすく解説
不動産を購入しようと資料を確認すると「位置指定道路に接する」などと記されていることがあります。
位置指定道路とは、主に市街地に位置する土地に住宅を建てるために建設された私道であり、持ち分がある場合は維持しつつ管理しなければなりません。
位置指定道路をわかりやすく簡単に解説し、注意点などもご紹介しましょう。
目次
- 1. 位置指定道路とは位置の指定を受けた私道
- 2. 位置指定道路が建設される理由
- 3. 位置指定道路の注意点
- まとめ - 位置指定道路は私道でありつつ自己都合で利用できない
1. 位置指定道路とは位置の指定を受けた私道
それでは、位置指定道路をわかりやすく簡単に解説します。
位置指定道路とは、市街地に位置する土地に住宅を建てるために、不動産業者や個人などが建設した私道です。
道路には、国や都道府県、市区町村などが建設しつつ維持管理する公道と、不動産業者や個人などが建設しつつ維持管理する私道があります。
道路の多くは公道であり、大通りや不特定多数の人が通行する道は大抵は公道です。
一方、行き止まりの袋路状道路など、特定の人のみが通行する道は私道の場合があります。
ところで、皆さんは建築基準法をご存知でしょうか。
建築基準法とは、建築物の構造や建築物が建つ敷地などに関する最低限の基準を定めた法律であり、全文はデジタル庁が運営するサイト「e-Gov法令検索」の建築基準法にて確認することが可能です。
建物を建てる際は建築基準法が定めた最低限の基準を守りつつ建築する必要があり、違法建築物などと呼ばれる建物は、建築基準法が定めた最低限の基準を満たしていません。
そして、建築基準法の第四十三条では、市街地に位置する建物が建つ土地は、同法律が定義する「市街地における道路」に2メートル以上接していなければならないと規定しています。
建築基準法の第四十三条をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
建築基準法 第四十三条(敷地等と道路との関係)
市街地に位置する建物が建つ土地は、市町村などが特例であると認める建物が建つ場合を除き、建築基準法が定義する「市街地における道路」に2メートル以上接していなければならない
ここで気になるのが、建築基準法が定める「市街地における道路」の定義です。
建築基準法が定める「市街地における道路」は大きく2つに分類され、1つめが主に公道です。
2つめは、建物を建てるために建設された、市町村などから位置の指定を受けた私道です。
位置指定道路とは、この2つめの「市町村などから位置の指定を受けた私道」を意味します。
「市町村などから位置の指定を受けた私道」という言い回しが難解ですが、「市町村から建築基準法における道路と認められた私道」などとお考えになれば良いでしょう。
資料に「位置指定道路に接する」などと記されている建売や土地、中古住宅などの不動産は、市町村から建築基準法における道路と認められた私道に接することを意味します。
建築基準法が定める「市街地における道路」の定義は、同法律の第四十二条の第一項の第一号から第五号などに記され、第四十二条の第一項の第一号から第五号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
建築基準法 第四十二条の第一項の第一号から第五号(道路の定義)
建築基準法における「市街地における道路」とは、主に公道、または、建物を建築するために建設された幅が4メートル以上などの一定の条件を満たす公道以外の道であり、なおかつ、市町村などから位置の指定を受けたものをいう
しかし、なぜ位置指定道路が存在するのでしょうか。
市街地にはたくさんの道路が建設され、その多くは国や都道府県、市区町村が建設した公道であり、道路に接していない土地など見たことがありません。
わざわざ不動産業者や個人が大金をはたいて位置指定道路を建設せずとも、どの土地にも建物を建てることができるはずです。
ところが、市街地には位置指定道路が建設される理由があります。
つづいて、位置指定道路が建設される理由をわかりやすく簡単に解説します。
2. 位置指定道路が建設される理由
建築基準法の第四十三条により、市街地に位置する建物が建つ土地は、建築基準法が定義する「市街地における道路」に2メートル以上接していなければなりません。
建築基準法が定義する「市街地における道路」とは、主に公道と位置指定道路です。
公道とは国や都道府県、市区町村が建設しつつ維持管理する道路であり、位置指定道路とは私道であり、不動産業者や個人が建設費を負担しつつ建設し、所有者が維持管理します。
ここで気になるのが、位置指定道路が建設される理由です。
市街地には多くの公道が建設され、どの土地も大抵は公道に接し、わざわざ不動産業者や個人が建設費を負担しつつ位置指定道路を建設する必要はないと考えられます。
しかし、以下のように広い土地を所有する不動産業者が土地を分割し、各区画に住宅を建てつつ個別に売却したいと考える場合はどうでしょう。
分割された手前の区画は公道に接するため、住宅を建てても建築基準法の第四十三条に違反しません。
一方、奥の区画は公道に接することができず、奥の区画に住宅を建てると建築基準法の第四十三条に違反する土地となります。
建築基準法に違反する不動産を好んで購入する人など存在しません。
そこで不動産業者が建設するのが、位置指定道路です。
広い土地を位置指定道路を含めつつ分割すれば、各区画が建築基準法が定義する「市街地における道路」に接することとなり、どの土地も建築基準法の第四十三条に違反しません。
このように、市街地に位置する広い土地を所有する不動産業者が土地を分割し、各土地に住宅を建てつつ売却する際などに位置指定道路は建設されることとなります。
また、市街地に位置する広い土地を所有する個人が土地を分割し、各土地を住宅用地として売却する際なども位置指定道路が建設されます。
以上などが位置指定道路が建設される理由であり、市街地に位置する広い土地を分割する際は、位置指定道路を建設することにより各区画に建物を建築することが可能です。
ただし、位置指定道路は私道であり、原則として所有者が費用を負担しつつ維持管理しなければなりません。
つづいて、位置指定道路に接する土地や、位置指定道路に接する土地に建つ住宅を購入する際の注意点をご紹介しましょう。
3. 位置指定道路の注意点
位置指定道路をわかりやすく解説すると、市街地に位置する広い土地を分割しつつ各区画に建物を建てるために不動産業者や個人などが建設した、位置の指定を受けた私道です。
市街地に位置する不動産を購入しようと資料を読むと「位置指定道路に接する」などと記されていることがありますが、それは不動産業者や個人が建設した私道に接することを意味します。
そして、位置指定道路に接する不動産を購入する際は、その位置指定道路の持ち分も併せて購入する場合と、位置指定道路の持ち分は購入しない場合があります。
位置指定道路の持ち分も併せて購入する場合は、原則として自らが費用を負担しつつ位置指定道路を維持管理しなくてはなりません。
また、位置指定道路の持ち分を購入しない場合であっても、場合よってはその所有者から維持管理費用や通行料などを請求されることがあります。
位置指定道路の注意点をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。
3-1. 老朽化による修繕費用の負担
位置指定道路は私道であり、私道は所有者が維持管理しなくてはなりません。
よって、位置指定道路の持ち分が含まれる不動産を購入し、位置指定道路が老朽化しつつアスファルトが破損した場合などは、自らが費用を負担しつつ修繕する必要があります。
修繕費用は位置指定道路の面積などによって異なり、20万円から30万円など様々です。
また、位置指定道路に接するもののその持ち分が含まれない不動産を購入した場合は、位置指定道路の所有者から維持管理費用を請求される可能性があります。
ただし、その位置指定道路が通り抜けすることが可能であり、不特定多数の人が通行しつつ公共性が高いと市町村などが判断すれば、市町村などが修繕費用を負担することもあります。
3-2. 固定資産税の負担
固定資産税とは、1月1日の時点で土地や建物などの不動産を所有する方に課せられる税金であり、その不動産が所在する市町村が徴収する地方税です。
位置指定道路は多くの市町村では固定資産税が課せられませんが、一部の市町村では少額ながら課税されることがあります。
また、位置指定道路の固定資産税を非課税にするためには申請が必要であり、前所有者が申請を怠っている場合も課税されます。
これらを理由に、位置指定道路に接する不動産を購入し、その位置指定道路に持ち分がある場合は、固定資産税が課せられることがあるため注意が必要です。
位置指定道路にかかる固定資産税の詳細は、私が運営するもうひとつのサイト「固定資産税をパパッと解説」にてわかりやすく解説しています。
位置指定道路の固定資産税が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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3-3. 上下水道管の交換費用の負担
位置指定道路には水道管や下水道管が埋設され、接する土地に接続されていることがあります。
水道管や下水道管の寿命は25年から30年などであり、公道に埋設された上下水道管が老朽化すれば、その交換費用は全て水道局が負担します。
しかし、位置指定道路は私道のため、その位置指定道路に埋設された上下水道管が老朽化した場合、その交換費用の一部を位置指定道路の持ち主が負担しなければならないことがあります。
また、以下のように水道管が埋設された位置指定道路に複数の土地が接し、各区画の所有者が位置指定道路の持ち分を共有する状況において水道管が老朽化すれば、各区画の所有者が交換費用を出し合わなければならない場合があります。
上記のような状況において、各区画の所有者が滞りなく交換費用を負担すればスムーズに水道管が交換されますが、一軒だけが支払いを渋るなどするとトラブルになることがあるため注意が必要です。
まとめ - 位置指定道路は私道でありつつ自己都合で利用できない
位置指定道路をわかりやすく簡単に解説し、その注意点をご紹介しました。
位置指定道路とは、市街地に位置する土地に住宅を建てるために不動産業者や個人などが建設した、市町村などから位置の指定を受けた私道です。
建売や一戸建ての中古住宅、土地を購入しようと詳細を確認すると位置指定道路に接していることがありますが、その不動産は私道に接することを意味します。
そして、その位置指定道路も併せて購入する場合は、その位置指定道路を維持しつつ管理しなくてはなりません。
また、位置指定道路を購入しない場合であっても、場合によっては位置指定道路の所有者から修繕費用や通行料などを請求されることがあります。
位置指定道路をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、位置指定道路は、市町村などから位置の指定を受けた、建築基準法で定義された「市街地における道路」に該当する私道です。
そのため、位置指定道路は、私道でありながら公共性を有しています。
よって、迷惑な人が通行することを理由に封鎖したり、駐車場として使用するなど、自己の都合だけで位置指定道路を利用することはできないため注意してください。
所有する位置指定道路を自己の所有物と捉え、マイカーを駐車するなどしつつ私物化し、近隣から訴訟を起こされる方を時折新聞などで見かけます。
ご紹介した内容が、位置指定道路をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2021年11月
記事公開日:2019年12月
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