全部事項証明書とは?登記事項証明書との違いなど解説
全部事項証明書とは、登記簿に記されている、その不動産の全ての情報を写した書面です。
しかし、これではわかりにくいため、全部事項証明書をイラスト付きでわかりやすく解説し、登記事項証明書との違いや見方、どこで請求できるかなど解説しましょう。
なお、ご紹介する内容は不動産の全部事項証明書であり、商業登記や法人登記には該当しないため留意してください。
目次
- 1. 全部事項証明書とは、登記簿の情報を全て写した書面
- 1-1. あらためて全部事項証明書をわかりやすく解説
- 1-2. 全部事項証明書の見本
- 2. 全部事項証明書の見方
- 3. 全部事項証明書はどこで手に入る?
- 4. 登記事項証明書と全部事項証明書の違い
- まとめ - 全部事項証明書の交付に必要なものはない
1. 全部事項証明書とは、登記簿の情報を全て写した書面
それでは、全部事項証明書をわかりやすく解説しましょう。
その前に、 登記簿という不動産用語を理解してください。
登記簿の意味をご存じの方は、次の項目である「1-1. あらためて全部事項証明書をわかりやすく解説」まで読み飛ばしていただいて構いません。
登記簿とは、法務局(法務省の地方支部局)に設置されている、不動産の権利を持つ者が記された公の帳簿です。
「不動産の権利を持つ者」という表現が難解ですが、主に不動産の所有者と考えれば良いでしょう。
土地や建物などの不動産は、品物のように記名できません。
そのため、不動産の持ち主は、自らが所有する不動産の所有者が自分であることを登記簿に記します。
そうすることにより、不動産の持ち主は所有権を主張できるようになり、他人が勝手に名義を書き換えるなどの不正を防ぐことが可能です。
また、その不動産を担保に取る者が存在する場合は、その情報も登記簿に記されます。
例をあげると、地主である山田太郎さんが、所有する土地を担保に入れつつ銀行から資金を借り入れた場合は、借り入れ金額や貸し主である銀行名も登記簿に記されるといった具合です。
そして、不動産が売却されるなどして所有者が変わった場合は、新たな所有者が登記簿に記されている所有者に関する情報を書き換えます。
たとえば、山田太郎さんの土地を鈴木一郎さんが購入した場合は、登記簿に記されている所有者に関する情報を「山田太郎」から「鈴木一郎」に書き換えるといった具合です。
そうすることにより、新たな不動産の所有者である鈴木一郎さんは、その不動産の所有権を主張できるようになります。
この場合、以前の不動産の所有者である山田太郎さんの名前は、過去の所有者として登記簿に残ります。
また、山田太郎さんが借り入れ金を返済し、その不動産が担保から外れた場合も同じであり、その情報が登記簿に残り続けます。
登記簿には、その不動産の現在の「権利を持つ者」に関する情報が記されると共に、「過去に権利を持った者」の情報も残るというわけです。
長くなりましたが、皆さん登記簿をご理解いただけましたでしょうか。
つづいて、全部事項証明書をわかりやすく解説しましょう。
1-1. あらためて全部事項証明書をわかりやすく解説
この記事の「1. 全部事項証明書とは、登記簿の情報を全て写した書面」でご紹介したとおり、登記簿は法務局に設置されていますが、残念ながら直接閲覧することはできません。
そのため、登記簿の内容を閲覧したいと希望する場合は、登記事項証明書の交付を法務局に請求します。
登記事項証明書とは、登記簿の内容を写した書面です。
登記簿は直接閲覧したり、持ち出すことができないため、内容を確認したい場合は、その写しの交付を請求するというわけです。
そして、登記事項証明書には、この記事のテーマである全部事項証明書を含めた以下の3つの種類などがあります。
登記事項証明書の主な種類
- 全部事項証明書
- その不動産の現在や過去の所有者、担保に関する情報など、登記簿に記されている内容が全て写された書面
- 現在事項証明書
- 登記簿に記されている、その不動産の現在の所有者や担保に関する情報のみが写された書面
- 登記事項要約書
- 登記簿に記されている、その不動産の現在の所有者に関する情報のみが写された書面
上記のように、登記事項証明書には主に3つの種類があり、そのうちのひとつが全部事項証明書です。
つまり、全部事項証明書とは、登記簿に記されている、その不動産の現在や過去の所有者、現在や過去の担保に関する情報などが全て写された書面というわけです。
以下は法務省が公開する全部事項証明書の見本であり、登記簿に記されている、その不動産の現在や過去に関する情報が全て写されています。
1-2. 全部事項証明書の見本
出典:法務省ホームページ
なお、日本にはたくさんの土地や建物などの不動産が存在しますが、不動産の所有者以外も全部事項証明書の交付を請求できます。
つまり、登記簿に記されている情報は、誰もが知ることができるというわけです。
2. 全部事項証明書の見方
全部事項証明書とは、登記簿に記されている、その不動産の現在と過去の情報が全て写された書面です。
ここから、法務省が公開する見本を元に、全部事項証明書の見方をわかりやすく簡単に解説しましょう。
全部事項証明書は、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」で構成され、それぞれには以下の内容が記されています。
全部事項証明書の内容
- 表題部
- その不動産の所在地や面積、地目、土地や建物などの不動産の種類、はじめて登記された日に関することなどの情報
- 権利部(甲区)
- その不動産の所有権を現時点で持つ者や、過去に持った者に関する情報
- 権利部(乙区)
- その不動産の所有権以外の権利(抵当権など)を現時点で持つ者や、過去に持った者に関する情報
上記を法務省が公開する、土地の全部事項証明書の見本に照らし合わせると以下のとおりです。
全部事項証明書の見方
出典:法務省ホームページ
なお、上記の法務省が公開する全部事項証明書の見本の下部には「共同担保目録」という項目があります。
共同担保目録とは、その不動産とセットで担保に設定されている不動産です。
たとえば、住宅ローンで一戸建てを購入する際は、建物と土地の両方が担保に設定されるのが通例です。
そのように、セットで担保に設定されている不動産がある場合は、共同担保目録に記されます。
見本は土地の全部事項証明書であり、共同担保目録には、その土地と、その土地とセットで担保に設定された建物が記されています。
3. 全部事項証明書はどこで手に入る?
全部事項証明書とは、登記簿に記されている、その不動産の全ての情報を写した書面ですが、法務局に申請することにより交付を請求できます。
法務局とは法務省の地方支部局であり、日本全国各地の法務局の場所は「法務局|管轄のご案内」にて確認することが可能です。
また、「登記・供託オンライン申請システム」では、オンラインで全部事項証明書を請求できます。
オンラインで全部事項証明書の交付を請求する場合は、郵送での受け取りを希望できます。
さらに、「登記情報提供サービス」では、全部事項証明書の内容をパソコンで確認することが可能です。
ただし、登記情報提供サービスでは、全部事項証明書の交付は請求できないため注意してください。
登記情報提供サービスは、全部事項証明書の内容をパソコンの画面で確認するだけのサービスです。
なお、法務局、または登記・供託オンライン申請システムで全部事項証明書の交付を請求する場合も、登記情報提供サービスで全部事項証明書の閲覧を希望する場合も、数百円などの手数料が掛かるため留意してください。
登記情報提供サービスで全部事項証明書の閲覧を希望する場合の手数料はクレジットカードで支払うことが可能ですが、登記・供託オンライン申請システムで全部事項証明書の交付を請求する場合の手数料を支払うためには、ネット銀行の口座が必要です。
全部事項証明書はどこで手に入る?
どこで? | 参考 | 手数料の支払い方法 |
---|---|---|
最寄りの法務局 | 法務局の場所は「法務局|管轄のご案内」にて探すことができる | その場で収入印紙を購入しつつ支払う |
登記・供託オンライン申請システム | オンラインで全部事項証明書の交付を請求することが可能であり、郵送での受け取りを希望できる | ネット銀行の口座から引き落とし |
登記情報提供サービス | パソコンで全部事項証明書を閲覧できる。ただし、交付は請求できない | クレジットカード |
※ 参考:東京法務局インターネットを利用して登記事項を確認するサービスについて
4. 登記事項証明書と全部事項証明書の違い
登記事項証明書とは、登記簿の内容を写した書面であり、主に以下の3つに分類されます。
登記事項証明書の種類
- 全部事項証明書
- 現在や過去の所有者、現在や過去の担保に関する情報など、登記簿に記されているその不動産の情報が全て写された書面
- 現在事項証明書
- 登記簿に記されている、その不動産の現在の所有者や担保に関する情報のみが写された書面
- 登記事項要約書
- 登記簿に記されている、その不動産の現在の所有者に関する情報のみが写された書面
以上の3つなどが登記事項証明書の種類であり、全部事項証明書は登記事項証明書の一種であり、登記簿の内容を全て写した書面です。
よって、登記事項証明書と全部事項証明書の違いは特にありません。
なお、誰でもわかる不動産売買では、登記事項証明書をわかりやすく解説するコンテンツも公開中です。 お時間のある方は、ぜひご覧ください。
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登記事項証明書とは?登記簿謄本との違いは?わかりやすく解説
まとめ - 全部事項証明書の交付に必要なものはない
全部事項証明書をわかりやすく解説し、見方やどこで交付されるか、登記事項証明書との違いなどをご紹介しました。
全部事項証明書とは、登記簿の内容を全て写した書面です。
全部事項証明書は「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」にて構成され、それぞれには不動産の所在地や所有権を持つ者、所有権以外の権利を持つ者などが記され、法務局やオンラインで交付を請求することが可能です。
全部事項証明書は登記事項証明書の一種であり、全部事項証明書と登記事項証明書の違いは特にありません。
なお、この記事の「1-1. あらためて全部事項証明書をわかりやすく解説」でご紹介したとおり、登記簿は公の帳簿であり、誰もが全ての不動産の全部事項証明書の交付を請求できます。
よって、全部事項証明書の交付を請求する際は、身分証明書など必要なものはありません。
数百円などの手数料さえ支払えば、誰もが全ての不動産の全部事項証明書の交付を受け、内容を閲覧することが可能です。
ただし、オンラインで全部事項証明書の交付を請求する場合は、手数料を支払うためにネット銀行の口座が必要となるため留意してください。
ご紹介した内容が、全部事項証明書をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2020年9月
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